Interview松本 陽子 さん
IT企業での本業と東京ITスクールの講師の仕事が、相乗効果を発揮する
二足の草鞋で活躍する松本さんに、東京ITスクールの講師を務める楽しさや魅力についてお聞きしました。
本業も企業や自社の研修講師や教育コンテンツの企画・立案
松本さんは、マイクロワークス株式会社の社員だと伺っています。普段は、どのようなお仕事をされているのでしょう。
マイクロワークスは組込み・制御技術、業務システム開発などで高い評価を受けているIT企業です。京都発祥で、現在は大阪にもオフィスを構えています。
事業は大きく分けると「システム開発事業」「技術支援事業」「教育事業」の3つで、私が就いているのは教育事業です。ここでは外部企業や自社の従業員向けにJavaプログラミングやプロジェクトマネジメント、情報セキュリティ、生産現場での品質管理など、さまざまな内容の研修を実施したり、教育コンテンツを作るお手伝いをしたりしています。
前職はエンジニアでしたが、そのころからお客様のシステム導入、専門学校の夜間コース、新入社員向けの集合研修などで情報セキュリティや個人情報保護などについての講師もしていました。その流れで現在もIT業界の教育関係の仕事に携わっています。
どのような経緯で東京ITスクールの講師になったのでしょうか。
今から5~6年前、東京ITスクールが大阪で研修を始めることになり、うちの社長が受講生募集の説明会に足を運んだことがきっかけです。その時、「セミナー室を貸し出せますし、何なら講師も出せますよ」と逆に営業をかけたんです(笑)。以来、私を含めた当社メンバーや、当社が紹介した外部技術者なども東京ITスクールの講師になっています。
私の場合は、最初はサブ講師から始まりました。メイン講師は東京ITスクールを運営するシステムシェアードの社員の方でした。私もいろいろな場で講師をしてきたので、当初は、他の企業は、どのようなセミナーをしているのか見たいという気持ちが強かったですね。また、講師同士の横のつながりを持ちたいという気持もありました。
今はメイン講師となり、主に新人向けJava研修の3か月コースを担当しています。以前は対面でしたが、コロナ禍以降はオンライン研修になり、去年と今年はひとつの企業だけの新人を対象にしたオンサイト研修を任されました。
講師をほったらかしにしないサポート体制
東京ITスクールの講師のやりがいとは。
受講生が「できた!」と言って喜んでくれること。成長していく姿を見ることが一番のやりがいです。
東京ITスクールではLMS(学習管理システム)の環境があり、受講生が提出する日報などをチェックすることでも、日々の成長を実感することができます。たとえば、最初は拙い内容だったのが、指導によって少しずつ修正され、次第に立派な内容になっていくのは、成長が垣間見える瞬間です。受講生の不明点や理解度、モチベーションを把握するのにLMSは非常に便利です。
カリキュラムで言えば、個人開発演習やチーム開発演習。成果報告書という形で企業の担当者に報告したり、受講生同士で成果を発表したりする場を設けているので、具体的な成長度合いを把握でき、成長を実感しやすいですね。
新人が対象なので、仕事に対する取り組み姿勢についても教えます。研修の最初にIT技術者のキャリア形成について話す時間があり、受講生にはスクール側が用意した目標設定シートを日々つけてもらい、月の最後には総括し内容を見直すことで、技術者・社会人として成長していくことも指導しています。
自分の部署に新人が入ってきた時に、当時を思い出したかのように連絡をくれる卒業生もいます。そうしたOBとのやりとりもうれしいですね。
講師に対するサポート体制はいかがですか。
研修前に、講義の内容をまとめたマニュアルを渡されますが、渡しっぱなしではありません。教えるポイントをレクチャーしてくれる講師向けの研修があるので、まずは、そこで学びました。そのうえで、わからない内容があれば問い合わせの窓口もあったので、開講までに不安を解消することはできました。
研修が始まってからは、オープン研修の時はエリアマネージャーと営業担当者、オンサイト研修では営業担当者がつきました。彼らとは「Slack」で常にコミュニケーションが取れる状態になっていたので、研修をすすめていく上で、特に不安は感じませんでした。
印象的だったのは、研修内容について、「こうしませんか?」と改善の提案をすると、東京ITスクール側は耳を傾け、納得すれば、きちんと対応してくれたことです。相談しながら進められるのも、非常にやりやすいですね。
研修テキストを渡してほったらかしではなく、伴走してくれるので、講師としてとても安心ですし、やりやすいと思います。
松本さんは、研修のコンテンツ作りもお手伝いしているそうですね。
夏になると新人研修は一旦落ち着きます。その後来年度に向けた研修の準備が徐々に始まります。そして最近は、毎年10~11月くらいになると、東京ITスクール側からテキスト作成協力のお声がけいただくようになりました。
これまでに、チーム開発演習など、いくつかのテキストや練習問題の作成などのお手伝いをしてきました。これまでの業務経験が生きる場面であり、これもやりがいのひとつです。
3か月間続くからこそ体調管理は必須
今後、講師としての目標はありますか。
できるだけ長く続けたいと思います。研修中はしゃべり続ける時間が長く、声を含めた体調管理の大切さは年を追うごとに痛感しています。また、技術は毎年進歩するので、それを追随しながら必要なことを伝えないといけないなど課題は山積です。
ITに対する受講生の捉え方も確実に変わっています。いまの新人は2000年生まれ前後で、小学校時代にはすでにスマホがある世代。小さなディスプレイの操作はお手の物ですが、パソコンやキーボード操作にはなれなく、時間がかかることがあります。私たちが当然と思っていることが苦手で、そうでないことに長けているので、伝え方も時代に合わせアップデートしないといけないと実感しています。
講師に向く人・そうでない人の違いは?
相手が育つのが楽しくてしょうがない人、おせっかいな人が向いていると思います。実際、私が東京ITスクールに講師としてご紹介した人は、人を見て引っ張り上げようという意識がある、経営者タイプの方が多いですね。反対に、高い技術をアピールするなど、技術だけを見ている人は講師に向いていません。新人に難しい技術は必要なく、基本的なことを教えて3年後や5年後に「役立った」と思ってもらえたらいいのです。
松本さんのように、これから講師をしてみたいという方にメッセージをお願いします。
エンジニアで、技術の伝承に関われる人はあまりいません。自分がやってきた技術を見直さないと第三者に伝えることはできませんから、講師はこれまでのキャリアをたな卸しする良い機会になりますし、違う視点でIT技術に触れるチャンスになります。いまの若い人の傾向を理解できたり、人材定着のヒントを見つけられたりと、自社へフィードバックできる情報をつかむこともできます。
私は東京ITスクールの講師募集もお手伝いしていますが、その時に言っているのは、「講師は自分の経験を未来に活かすために伝える役割」ということです。後進の育成に興味がある方は、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
インタビュー・文/大正谷 成晴
撮影/小堀 将生