Interview梅野 慎一朗 さん
Java開発未経験でもマネジメント視点で
受講生の力を引き出す人気講師に
梅野さんの指導で受講生たちは大きく成長し、研修の最終月に行われる発表会は感動的な空気に包まれます。意外なことに、梅野さんはJavaエンジニアではありません。当社の講師研修やサポートを受けながら、どのようにJava研修の人気講師になったのかを伺いました。
本業は子供向けプログラミング教室の企画立案
株式会社ロジカ・エデュケーションでは、どのようなお仕事をしているのでしょうか?
ロジカ・エデュケーションは、プログラミング教室の運営や教材開発など、教育に特化している会社です。私は幼稚園児や小学生など、子供向けの教材開発や営業の企画立案などを担当しています。
これまでの経歴を教えてください。
そもそもIT系の会社に入社したのは商業高校の出身だったから。ITの授業もあったし、ITパスポートの資格も取ったので、父親の知人が経営していたIT系の会社に入社しました。ところが、新卒採用は私が初めて。会社はどんな仕事を与えればいいのか分からなかったようで、結果として、雑多な仕事をやらせてもらいました。ただどの仕事もあまりうまくできず、会社も頭を抱えていたようです。
そんな時、ある幼稚園から「プログラミング教室を開いて欲しい」と依頼がきたのです。 「社会人の教室より、年が近い子供向け教室の方が梅野には合っているのではないか」ということで、子供向けの教室の立ち上げから運営まで担当することになりました。 子供たちが飽きないよう、おもちゃなどを使った授業スタイルも考案しました。こうした授業は子供たちにも、先生方にも好評でした。以来、幼稚園だけではなく、小学生や中学生など、様々な子供向け教室の企画立案を手掛けています。経験を活かして、現在は新入社員の研修の企画立案も担当するようにもなっています。
どのような経緯で東京ITスクールの講師になったのでしょうか。
東京ITスクールの受講生は増える一方なので、常に講師を探しています。京都会場でも講師が足りなくなり、「うちの会社に講師を出してもらえないか?」とオファーが来たのです。
私は企画立案の立場から、いつもサブ講師をやっていますが、メイン講師はやったことがありませんでした。社内には上手な講師が沢山いるからです。東京ITスクールからのお話はメイン講師を体験できる大チャンスと思い、自分からやりたいと手をあげました。 また高校時代の同級生の活躍も後押しになりました。彼は大学生の時に起業し、なおかつITのグローバル企業に就職。彼を見て自分も新しいチャレンジをしなくてはと思ったのです。
東京ITスクールのサポート体制
梅野さんは、Javaエンジニアの経験はないと伺っていますが。
はい。社内の研修や開発案件で扱っていたものについては若干知っている程度。たとえば「JavaのフレームワークにSpring Frameworkというのがある」といったことすら知りませんでした。ですから、まずは受講生と同じレベルで学習する必要があったのです。
ありがたかったのは、Spring Frameworkのテキストが非常に詳しく書かれていたことですね。難しすぎず易しすぎず。しっかり読み込めば、研修講師として十分にやっていけるという手ごたえを感じました。
講師を対象にした研修はいかがでしたか。
3月に講師研修を受けました。研修期間は1日程度でしたが、分からないところがあれば、ピンポイントでわかりやすく解説してもらえた。たとえば「Spring FrameworkとJSPサーブレットは、こういうところが違うし、ララベルとはこう違う」といった具合でしたので、期間的にも十分でした。
またリアルタイム研修とは別に「こういう方法でやると効果的です」といったアドバイス動画が定期的に東京ITスクールの本部から流れてきました。グループ単位の研修の進め方、グループの分け方、受講生の満足度が高くなる働きかけなどがありましたね。 こうした情報の中で自分の研修スタイルにあったものをチョイスしたり、アレンジしたりしながら、自分らしい研修スタイルをブラッシュアップできました。
実際に講義を始めるまでには、どのくらいの期間がありましたか。
研修を受けたのが3月で、実際にSpring Frameworkの学習開始が5月。準備期間は十分ありました。
講義の準備は何日前からしていますか。
私は基本的に前日です。必ずやることは、開発演習の問題を解くこと。過去にやった問題でも必ず解きます。あとは土日を使って総合試験の問題も解きます。一度解いてみると、受講生はどの辺でつまずきそうだとか、ここが苦手そうだとか予測できるので、スムーズな講義ができます。
営業担当者のサポートはいかがでしたか。
営業担当者が企業側と連携して受講生の現状をきちっと報告してくれたのは、ありがたいと思いました。「受講生の元気がない」といった時でもスピーディーに対応してくださったので、私は一度も企業側とやりとりする必要はなく、教えることに専念できました。
自分より年上の受講生もまとめるコツ
京都会場での講義はずっと対面授業だったそうですが、受講生は何人くらいいたのですか。
初年度は17人でした。まったくプログラミングをやったこともない受講生もいれば、大学院で人工知能の研究までしてきた私より年上の人もいました。
でも必要以上にはおびえたりせずにすみました。7年の社会人経験に加えて、東京ITスクールの「質問対応チーム」もあったからです。
またSlackで質問すれば、同じプログラムで動いている他の会場の講師などからも解答がもらえます。このようなサポート体制があるので、いざとなれば頼ればいいという安心感につながりましたね。
受講生のレベルにばらつきがあると、教えるのが大変ではありませんか?
自分ひとりで教えるのではなく、大体、3人から4人くらいの小さなチームをつくりお互いに教えあったりするグループワーク形式をとっていました。会社のマネジメントと同じですね。優秀な受講生がいるからこそ彼らの力を借りながら研修を進められました。
また一人ばかりに負担がかかったり、チームのレベルに差がついたりしないように1週間から2週間に1度ぐらいのペースでメンバーを変えるといったこともしていました。
研修で、最も力を入れたことは?
受講生に自分の長所に気づいてもらうことですね。
自分の長所に気づくと自信がつき、モチベーションも上がり、能力・技術も上がっていくからです。そして、ある時、突然、飛躍的に能力が向上する瞬間が訪れます。その瞬間は、非常に感動的です。
どのように長所に気づかせるのですか?
たとえば「私には長所がない。まずいところだらけです」という人には、「そういう謙虚さっていいですよね」と伝える。「自分では何もできない。役にたたない」と思っている人には、「それは責任感が強いからですね」といった具合です。寄り添うようにいいところを一緒に発見していくようにしています。
技術的に優れていても、コミュニケーションが苦手だと思っていることがネックになって成長できない人もいます。そうしたケースでは弱点とどう向き合えばいいか一緒に考えていく感じですね。
何よりもうれしいのは受講生の笑顔
講師の一番のやりがいは?
私がやりがいを感じるのは成果報告会のときですね。
自分自身が技術面、人材面からどう成長したのか、ビフォア・アフターで話してもらっているのですが、その時、受講生が十分満足そうな笑顔、楽しそうな笑顔をみると、心底、講師をやってよかったなと思います。
講師をやろうとしている人に一言お願いいたします。
人に教えることによって、技術面でも人材面でも成長できるというか、レベルアップできるので、とくに20代の人には、リーダーになるための一つのステップとして研修講師に挑戦するのはありですね。私自身も、講師をやることで忍耐強くなったし、ストレス対処能力も高まったと思います。興味がある人は、挑戦することをおすすめします。
インタビュー・文/竹内 三保子
撮影/小堀 将生