アジャイル開発とは?メリット・デメリットや進め方を解説
公開日:2023年12⽉25⽇最終更新日:2023年12⽉25⽇
日々さまざまなアプリやソフトがリリースされている現在、以前にもましてスピーディーな開発が求められています。
そこで注目されているのが「アジャイル開発」です。
アジャイル開発を導入すれば、よりユーザーのニーズや要求にそったソフトウェアやシステムを、速やかに開発しやすくなるでしょう。
この記事では、アジャイル開発の概要やフレームワーク、メリット・デメリットのほか、導入方法を解説します。
よりユーザーのニーズに答えられる開発体制を作りたい方、従来の開発手法に限界を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
アジャイル開発とは?
まず、アジャイル開発の概要とウォーターフォール開発との違いを解説します。
実装とテストを繰り返す開発
実装とテストを繰り返す開発手法のことを「アジャイル開発」といいます。
アジャイル開発では、最初の段階で厳密な仕様を決めることはせず、おおまかな仕様や要求を取りまとめて開発に着手し、機能ごとに計画・設計・開発・テストといった一連の工程を繰り返していきます。
機能ごとに短期間で一連の工程を繰り返すことで素早い開発・実装が可能になるため「アジャイル(agile。英語で”素早い”の意味)開発」と呼ばれています。
ウォーターフォール開発との違い
ウォーターフォール開発は、従来からある開発手法です。計画・設計・開発・テストの各工程を、上流工程から順番に進めていくのがウォーターフォール(滝)の流れに似ているため「ウォーターフォール開発」と呼ばれています。
ウォーターフォール開発は、アジャイル開発と違って最初の段階で細かい仕様まで決めてしまいます。製品をリリースするタイミングは、すべての開発工程が完了してからです。
そのため、開発からリリースまで時間がかかるだけでなく、途中で仕様を変更したり機能を追加したりするのが難しいという特徴があります。
アジャイル開発の流れ
ここからは、アジャイル開発の工程と流れを解説します。
リリース計画を決定する
アジャイル開発では、最初から厳密な仕様を決めることはしません。しかし、仕様や要求をまったく定義せずに開発を進めることはできないので、開発前に大枠の仕様と要求を設定します。この工程のことを「リリース計画」といいます。
リリース計画は完全かつ絶対ではなく、開発の途中で新たな要求や仕様が加わったり、変更されたりすることも珍しくありません。
機能ごとに開発工程を繰り返す
リリース計画が決まったら、機能ごとに要件定義・設計・実装・テストの一連の工程を繰り返しながら開発を進めます。
ひとつの開発工程は1~2週間スパンで繰り返すことが多く、工程が完了するたびに機能を実装するのが一般的です。
アジャイル開発のメリット・デメリット
ここからはアジャイル開発のメリット・デメリットをみていきましょう。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発のメリットは、次のとおりです。
・開発着手後の仕様変更にも柔軟に対応できる
・開発が完了した機能から順次リリースできる
・機能ごとに開発を進めるため、ソフトウェアの故障・エラーが少ない
・1人のエンジニアがさまざまな作業を担当するため、スキルアップ・成長につながる
アジャイル開発では、開発前に厳密な仕様を決めたりしません。そのため、開発をはじめてから仕様変更が必要になっても柔軟に対応できるのがメリットです。
また、完成した機能から順次リリースできるため、欲しい機能をスピーディーに導入できます。そのため、ニーズ把握から開発・リリースまでのタイムラグが生じにくいのもポイントです。
アジャイル開発においては、1人のエンジニアがさまざまな作業を担当します。そのためメンバーのスキルアップや成長にもつながりやすいのも導入するメリットです。
アジャイル開発のデメリット
さまざまなメリットがある一方、アジャイル開発には次のようなデメリットもあります。
・仕様や要求を確定させずに開発に着手するため、途中で方向性や目的を見失ってしまうことがある
・開発スケジュールの見通しが立てにくい
・機能ごとに開発を進めているため、全体の進捗状況がわかりにくい
アジャイル開発はウォーターフォール開発と異なり、開発前に厳密な仕様や要求を定義しません。そのため、すべての要求に応えようとすると方向性や開発目的がゆらいで、成果物の質が低下してしまいやすいといわれています。
短いスパンで一連の工程を繰り返す都合上、同時に進行している開発の進捗状況がわかりにくいのもデメリットです。
機能ごとの開発スケジュールを確実に把握するには、タスク管理ツールなどを導入するとよいでしょう。
アジャイル開発を成功させるうえで重要なこと
アジャイル開発をする際は、次の3つのことが重要です。
チームワーク
アジャイル開発では、顔を合わせて積極的にコミュニケーションをとることが重要です。
開発したソフトウェアやシステムを使うユーザーと開発するエンジニア双方が、コミュニケーションを通じてゴールを共有することが、開発を成功させるのに欠かせません。
無理のないスケジュール
アジャイル開発では、一連の開発工程を短いスパンで繰り返します。そのため、一人ひとりの作業量が多くなり、人によっては手一杯になってしまうことが少なくありません。
アジャイル開発を成功させるには、スピードと質を維持した状態で継続的に開発ができるよう、無理のないスケジューリングが求められます。
顧客満足度の向上
アジャイル開発の最終目標は、より顧客に満足してもらえるものを提供することです。品質を向上させ続けるには、常に問題意識を持ち改善点を探る姿勢が欠かせません。
アジャイル開発のフレームワーク
先述の価値観を大切にしながら、アジャイル開発では主に次のフレームワークで開発を行います。
- スクラム
- XP
- FDD
それぞれの特徴を簡単にみていきましょう。
コミュニケーションを重視する「スクラム」
スクラムは、チーム間のコミュニケーションを重視するアジャイル開発の代表的なフレームワークです。スクラムを活用して開発を進めると、チームワークが強化されて生産性が向上しやすくなります。
スクラムでは、メンバーが自ら計画を立て、開発の進め方や進捗に問題がないか、開発したシステムがきちんと動いているかをチェックします。
開発チームのメンバーがある程度固定されているのも特徴です。
各メンバーには、次の役割が割り振られます。
■ プロダクトオーナー
開発の方向性などを決定し、反復期間ごとの評価をする
■ 開発者
プロダクトオーナーの考えに基づいて開発を進め、開発に責任を持つ
■ スクラムマスター
プロダクトオーナーや開発者が抱える課題の解決をサポートする
それぞれのメンバーが密にコミュニケーションをとり、積極的に情報を共有することがスクラムでのソフトウェア・システム開発を成功させるポイントです。
柔軟性を重視する「XP(エクストリーム・プログラミング)」
XPは「エクストリーム・プログラミング」とも呼ばれるフレームワークです。XPでは、計画に従って開発を進めることよりも、その時々のニーズや要望に応じて柔軟に対応することを重視します。
XPでは「5つの価値基準」と「19のプラクティス」を実践することで、柔軟性のある開発が実現できます。また、エラーの早期発見がしやすいのも、XPのメリットです。
XPにおける「5つの価値基準」は、次の5つです。
■ コミュニケーション
積極的にコミュニケーションをとることで、必要な情報を共有する
■ シンプル
急な仕様変更にも柔軟に対応できるように、シンプルなソフトウェア・システムを開発する
■ フィードバック
開発したものに対してフィードバックをもらってブラッシュアップし、成果物の無駄を省く
■ 勇気
仕様変更が発生した場合など、すでにできあがったものを作り直す勇気を持つ
■ 尊重
開発に関わる人の立場や考えを尊重する
XPを活用してアジャイル開発を行う際は、この5つを全員で共有することが重要です。
「19のプラクティス」は、大きく4つのプラクティスに分けられます。
共同のプラクティス | 反復を行う 共通の用語を使う 開けた作業空間を確保する フィードバックをする |
管理者のプラクティス | 責任を受け入れる 必要なサポートを行う 四半期ごとに見直しを行う 進捗状況を把握してメンバーと共有する 業務量やペースを管理する |
開発のプラクティス | テスト駆動を開発する ペアプログラミングを実施する リファクタリングを実施する ソースコードの共有する 継続的インテグレーションを実施する 今必要なことを実施する |
顧客のプラクティス | ストーリーを作成する リリース計画を作成する 受け入れテストを行う 短期リリースを行う |
以上のプラクティスを各メンバーが責任を持って実践することは、XPによる開発の質を高めることに繋がります
質を重視する「FDD(フューチャー・ドライブン・デベロップメント)」
FDDは「ユーザー機能駆動開発」とも呼ばれるフレームワークで、「5つの基本活動(開発工程)」と「ベストプラクティス」を中心に据えて開発を進めます。
「5つの基本活動」は次のとおりです。
■ 全体モデル開発
プロジェクトメンバーが見つけた仕様や構成の問題点や、その解決策をまとめる
■ フィーチャーリストの構築
顧客にとっての重要度をもとに、2週間以内で開発できる機能(フィーチャー)をリスト化する
■ フィーチャーごとの計画
フィーチャーごとに開発計画を立て、担当者を決める
■ フィーチャーごとの設計
フィーチャーごとに設計パッケージを作成し、第三者のチェックを受ける
■ フィーチャーごとの構築
フィーチャーごとにコーディングを実施し、テスト・第三者によるチェックを行う
FDDにおけるベストプラクティスは次のとおりです。
ドメイン・オブジェクト・モデリング | 解決すべき問題を調査し、メンバーに説明する |
フィーチャー毎の開発 | 機能を2週間以内に開発できる部分機能(フィーチャー)まで細かく分けて開発する |
クラス毎のオーナーシップ | 責任者に任命されたプログラマーはオーナーとして開発に責任を負う |
フィーチャーチーム | 開発するフィーチャーごとに小規模なチームを動的に結成する |
インスペクション | 第三者によるチェックを実施する |
構成管理 | すべてのフィーチャー開発の進捗を管理し、ソースコードの変更履歴を保存する |
定期ビルド | 定期的にビルドを行なって、顧客に対するデモンストレーションとエラーの早期発見を行う |
進捗と成果の可視化 | こまめに・正直に進捗と成果を報告する |
FDDは、ほかのフレームワークに比べて顧客とのコミュニケーションコストがかかる点がデメリットです。しかし、各機能を短期間で開発できるシンプルな機能にまで細分化して開発を進めるため、機能的でシンプルなソフトウェア・システムが開発でき、大規模なプロジェクトにも対応しやすいというメリットがあります。
アジャイル開発が適しているプロジェクトの特徴
ここからはアジャイル開発に適しているプロジェクトは次のとおりです。
- 頻繁に新しい機能を実装したり改善を繰り返したりするプロジェクト
- 市場におけるサービスや製品の価値検証を行うプロジェクト
- 発注側・受注側の関係がフラットなプロジェクト
- うまくいくやり方が決まっていないプロジェクト
アジャイル開発は、厳密な仕様を決めずに開発をスタートするため、分析結果を反映させながら素早くソフトウェアやシステムを開発しなければならないプロジェクトに適しています。
また、短い期間で開発からフィードバックを行うことを繰り返すため、工程のブラッシュアップがしやすいのも特徴です。そのため、良い結果を得る方法がわからない・決まっていないプロジェクトでも、よい結果を得る最短ルートを見つけやすいでしょう。
アジャイル開発を導入するには
ウォーターフォール開発が主流の現場に、アジャイル開発を導入する方法を解説します。
反復開発からはじめて徐々にシフトしていく
現在の開発手法とアジャイル開発のギャップが大きい場合は、少しずつアジャイル開発にシフトしていく方がよいでしょう。
おすすめは、反復開発から少しずつアジャイル開発に慣らしていく方法です。
反復開発とは、分析・要件定義・設計・実装・テストといった一連の工程を繰り返し行う開発手法です。アジャイル開発が開発したソフトウェアやシステムの質を重視するのに対し、反復開発は計画通りに開発を進めることを重視します。
反復開発を導入したら、少しずつ反復にかける時間を短縮したり、開発前に確定させる仕様・要求の割合を減らしたりして、少しずつアジャイル開発に慣れていってもらいましょう。
少しずつアジャイル開発に移行していく際は、エンジニアだけでなく、プロジェクトの管理者やクライアントにもアジャイル開発のメリットを実感してもらうことが重要です。
チームメンバーにトレーニングを実施する
現在実施している手法からアジャイル開発に移行期間を経ずに切り替えたい場合は、チームメンバーにアジャイル開発のトレーニングを実施するのが効果的です。
アジャイル開発では、1人のエンジニアがさまざまな業務を担当しなければなりません。それだけでなく、仕様の変更や機能の追加に対して、柔軟に対応できるスキルを身につけることも重要です。
アジャイル開発に必要なスキルを身につけるには専門のトレーニングを受けるのが近道です。
従来の手法でソフトウェアやシステムを開発するのに限界を感じている場合は、できるだけ早くアジャイル開発のトレーニングを実施しましょう。
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アジャイル開発を導入して開発スピードを加速させよう!
これまでは「ウォーターフォール開発」が一般的な開発手法でしたが、最近はアジャイル開発でソフトウェアやシステムの開発を行う現場も増えてきています。
アジャイル開発は、機能ごとに1~2週間の短いスパンで反復を繰り返し、開発を進めていく方法です。そのため、短期間で新機能をリリースしたり、機能を改善したりできます。
また、開発前の段階で厳密な仕様や要求を決めないので、開発途中の仕様変更や要求追加にも柔軟に対応できます。
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現場SEとして活躍する傍ら、IT研修講師として多数のIT未経験人材の育成に貢献。
現在は中小企業を中心としたDX、リスキリングを支援。
メンターとして個々の特性に合わせたスキルアップもサポートしている。
趣味は温泉と神社仏閣巡り。