【組織と戦略を考える】戦略立案の手順とポイント
公開日:2024年04⽉18⽇最終更新日:2024年04⽉18⽇
組織が将来にわたって存続・発展していくためには、戦略が必要です。しかし組織における戦略を立てることはたやすいことではありません。そもそも正しい手順を踏まないと的外れな戦略となってしまいます。
この記事では、組織の戦略について解説します。この記事を読むと以下のことが理解できます。
・組織にとっての戦略とは
・戦略立案の準備
・戦略立案のプロセス
・戦略実行のポイント
企業の担当者の方、役員など経営陣の方はご一読ください。
組織にとっての戦略とは
戦略とは、組織のビジョンを達成するために設定される長期的な計画です。これには、競争優位を得るための手段や、組織の方向性を示す目標が含まれます。組織にとって、戦略はどのような意義を持つのでしょうか。以下の側面から解説します。
・戦略立案の意義と必要性
・組織の目的と戦略の関連性
・競争優位を築くための戦略要素
順に見ていきましょう。
戦略立案の意義と必要性
戦略立案の意義と必要性とは、組織が目指すべき方向を明確にし、リソースを効率的に活用して目標に到達するための重要なステップです。適切な戦略を立案し組織全体で共有することで、組織の活動を統一し、競争環境の中で成功を収めるための道筋を示すことができます。そのため、戦略立案は組織運営において欠かせない要素となります。
組織の目的と戦略の関連性
組織の目的と戦略は密接な関連を持ちます。組織が設定する目的は、その活動の方向を示す指針となります。一方、戦略はこの目的を達成するための手段、行動計画です。つまり、目的が「何をするか」を示すのに対し、戦略は「その目的を達成するためにどうするか」を明示します。
組織の目的設定が明確であればあるほど、戦略の立案もスムーズに進むといえます。しかし目的と戦略の関連性を理解しないまま戦略を立ててしまうと、組織全体が同じ方向を向かず、目的達成が難しくなる可能性があります。だからこそ、目的と戦略の関連性を理解し、両者が連動して機能することが大切です。
競争優位を築くための戦略要素
競争優位を築くための戦略要素は多岐にわたります。
まず、顧客価値創造による差別化が不可欠です。これは特定の顧客層に価値ある製品やサービスを提供してそのニーズを満たすことで、他企業との差別化を図ることを意味します。
次に、コストリーダーシップも重要な要素です。これはより低コストで質の高い製品やサービスを提供し、価格競争で優位に立つことを指します。
最後に、イノベーションが挙げられます。これは既存の市場で新たな価値を創造したり新たな市場を開拓したりするなど、他社が追随できない独自の技術やサービスを開発することを指します。
これらの要素は互いに独立しているわけではなく、重ね合わせたり組み合わせたりすることでより強固な競争優位性を築くことができます。組織としては、自社の強みや弱み、外部環境との関係を見極めながら、最適な戦略を選択し実行することが求められます。
戦略立案の準備
次に戦略立案を行う際の準備について解説します。以下の点についてまとめます。
・組織の現状分析
・SWOT分析の実施
・競合他社の戦略分析
・市場環境の変化と対応
順に見ていきましょう。
組織の現状分析
組織の現状分析は、戦略立案の重要なステップです。まずは組織の強み、弱み、成功・失敗の原因を明らかにすることから始めます。その上で組織のビジョンや成果目標と現状を照らし合わせることで、必要な改善や新たな方向性を見つけるための洞察が得られます。
例えばトヨタ自動車は細部に至るまでの現状分析を行い、無駄を排除するカイゼンという独自の改善戦略を作り上げました。このような徹底した現状分析が、自社の競争力を理解し、それを基に長期的な戦略を立てるための基盤となります。
SWOT分析の実施
SWOT分析は、企業が自身の「Strength(強み)」、「Weakness(弱み)」、「Opportunity(機会)」、「Threat(脅威)」を分析する手法で、戦略立案の重要な一部です。
まず強みと弱みである内部環境を認識し、自社の長所と短所を理解します。次に、外部環境を機会と脅威として把握し、市場の動向を察知します。この分析結果を元に、強みを活かし、弱みを補い、機会を捉え、脅威から身を守る戦略を立てることができます。
競合他社の戦略分析
競合他社の戦略分析とは、自社の優位性を維持し、競争力を強化するために必要なステップです。まず初めに、マーケットに存在する競合他社を明確に把握し、その後彼らのビジネスモデルやプロダクト、価格、プロモーション戦略などを評価します。
競合他社の戦略分析から得られた知識は、自社の戦略立案やビジネスプランの修正に活用し、競争優位性を保つための行動計画を策定するのに役立ちます。
市場環境の変化と対応
市場の変化に対応するためには、まず現状把握として市場のトレンドや顧客のニーズ、新たな製品やサービスの登場など、どのような変化が起きているのか定期的に分析しましょう。
また、市場環境の変化に対する企業の対応はを素早く、かつ適切に行うことが求められます。そのためには、アクションプランの策定や組織全体での情報共有、そして変化を柔軟に受け入れられる組織文化の育成が必要です。このように市場環境の変化に柔軟に対応することで、企業は競争優位性を保つことができます。
戦略立案のプロセス
次に戦略立案のプロセスについて解説します。以下のように分けてまとめます。
・目標設定の重要性
・戦略オプションの選択
・戦略の実行計画
順に見ていきましょう。
目標設定の重要性
目標設定は戦略立案の初期段階で行われ、その方向性を決定づける重要なプロセスです。適切な目標設定により、全社員が同じ方向に向かって能力を最大限に発揮できるようになります。また、目標設定は業績評価の基準ともなり、実行フェーズにおけるモチベーション維持にも寄与します。
明確な目標設定は、組織全体の活動を統一し、業績を最大化するための基盤を作り出します。
戦略オプションの選択
戦略オプションの選択は、組織が目指す成果にどの道筋で到達するかを決定する重要なプロセスです。業界の動向、自社の強み、リソース、競合状況などを考慮し、可能性ある多くの戦略オプションを洗い出してください。その中から最も効果的で適切なものを選びます。
また、決定した戦略オプションは必ずしも固定的なものではありません。市場環境や組織の状況が変化すれば、戦略も適応させるべきです。これは、アマゾンが初期のオンライン書店からクラウドサービスやAI技術へと事業領域を広げていった例が示しています。
戦略の実行計画
戦略の実行計画を立てることは、目標達成のためには欠かせません。まず選択した戦略を具体的にどのように実行するのか、ステップバイステップのアクションプランを作成します。この段階では明確なタイムラインと責任者を設定し、リソース(時間・人・財)の配分を計画します。
また、予期しない事態に備えてリスク対策も設けることが重要です。例えば各部門が連携しリスクを最小限に抑えれば、期待を上回る売上を達成することができるでしょう。このように具体的な実行計画があることで、戦略の迅速な実行とその結果の最大化が可能になります。
戦略実行のポイント
最後に 戦略実行のポイントについてまとめます。以下の内容です。
・KPIの設定と管理
・チームのモチベーション
・変化への適応と柔軟性
・継続的な評価と改善
・成果測定の方法
・戦略の見直しと調整
・フィードバックループ
1つずつ見ていきましょう。
KPIの設定と管理
戦略実行の鍵となるのがKPI(Key Performance Indicator)です。KPIは業績評価指標の一種で、組織の戦略が効果的に運用されているかを分かりやすく把握する目安となります。例えば、売上増加を目指す戦略の場合、KPIとしては売上高や新規顧客数などの数値が挙げられます。これらのKPIを定期的に追跡、評価し、目標達成度をチェックすることで、戦略の修正や改善の必要性を早期に察知できます。
なおKPIの設定は戦略の目標と結びついている必要があり、適切なKPIを設定することで組織全体の方向性が明確になります。また、KPIはスタッフの成果や組織の成長を促すためのモチベーション向上にも寄与します。しかし組織の状況や戦略内容により最適なKPIは異なるため、それぞれの組織に最適なKPIを設定し、管理することが求められます。
チームのモチベーション
チームのモチベーション管理はストラテジー実行の重要な要素となります。モチベーションが高いチームでは生産性が向上し、目標達成に向けて主体的に行動する傾向が見られます。一方、モチベーションが低いと、生産性が下がり、仕事に対する満足度も低くなります。
具体的なモチベーション管理の手法としては、目標設定の明確化、フィードバックの提供、適切なインセンティブの設定などがあります。またモチベーションの維持にはチーム内でのコミュニケーションの促進も重要で、それによりチームメンバー間の信頼関係が深まります。
それぞれのチームメンバーが自分の仕事と組織の目標との連携を理解し、それを達成するために最善を尽くすような環境を整えることが重要です。モチベーションを高めることで、組織全体のパフォーマンスを向上させ、戦略の達成に寄与します。
変化への適応と柔軟性
変化への適応と柔軟性は、戦略の成功にとって不可欠です。市場環境や競合状況は常に変化しています。柔軟性がなければ大胆なシフトは難しいでしょう。また変化への適応力は、未知のリスクに対処したり、新規ビジネスチャンスをつかむためにも重要です。組織全体で変化への敏感さを持ち合わせ、随時戦略を調整できる体制を構築することが求められます。
継続的な評価と改善
戦略の実行は一度きりのものではありません。組織の成功は、戦略の継続的な評価と改善によって可能となります。評価は、戦略が目標に沿って進行しているかを確認し、必要な変更を特定するために行われます。一方、改善は評価から得られた情報に基づいて戦略を修正し、結果的に組織のパフォーマンスを向上させるための行動です。
評価と改善の一環として、組織は定期的に戦略の進捗を測定し、達成度を確認すべきでしょう。また、成果の測定方法や評価指標が明確であること、そして、適切なフィードバックループが設けられていることも重要です。改善のためには新たな情報や学びを戦略に反映させ、組織の目標と現実のギャップを埋める努力が求められます。
以上の評価と改善のプロセスは、戦略が有効で適切であることを保証し、組織が競争力を保ち続けるために不可欠です。
成果測定の方法
成果測定は戦略実行の成否を判断する重要な手段であり、明確な基準の下に行われるべきです。まず定量的な指標を設定します。これは売上高や市場シェアといった具体的な数字で示せるものが適しています。例えば新製品の開発を戦略として立案した場合、その成果を数量的に示すためには、「6カ月後の売上目標は前年比150%」といった具体的な目標値を設定することが有効です。
次に、定性的な指標も重要です。従業員の士気や顧客満足度など、数値で表すのが困難な要素も考慮に入れることで、より全面的な成果測定が可能になります。これらの指標は、調査やフィードバックを通じて収集されます。
最後に、これらの成果を定期的にチェックし、測定結果を元に戦略を見直すことも重要です。細かい調整を繰り返し、組織の成長に繋げることが求められます。
戦略の見直しと調整
戦略は一度立案したら終わりではなく、絶えず見直しと調整が必要な生き物です。市場環境は常に変化し、競合他社の行動も予測不能です。そのため戦略は固定的なものではなく、柔軟に見直し必要に応じて調整を行うべきです。
その過程で重要なのがデータの収集と分析です。組織のパフォーマンスを定量的に測ることで、戦略が適切に機能しているか、また改善の余地がどこにあるかを明らかにすることができます。
戦略見直しと調整は組織の持続的な成功を支える重要なプロセスです。
フィードバックループ
フィードバックループは、戦略実行の成果を継続的に評価し、必要に応じて戦略を見直すための重要なプロセスです。
これは、組織が目指す成果を達成するために戦略の効果を定期的に確認し、必要に応じて改善や調整を行うものです。例えば、新商品の販売戦略を立案し実行した次第、フィードバックループではその販売結果を見て、予想通りの結果が得られているか、または何が問題であったのかを分析します。そしてその結果を基に、戦略の見直しや調整を行うのです。
このようなフィードバックループを設けることで、組織はより効果的な戦略を継続的に進化させることが可能になります。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
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