研修中の解雇は可能?企業が知っておくべき法律
公開日:2024年06⽉21⽇最終更新日:2024年06⽉21⽇
企業にとっても参加者にとってもできるだけ避けたいことではありますが、社員に適正がないということが研修中に発覚することもあります。新入社員に限って言えば研修期間中は一般に試用期間に当たりますが、クビにすることは法律上問題ないのでしょうか。
この記事では、研修中に解雇することについて解説します。以下の点について深堀していきます。
・研修中の解雇可能性に関するポイント
・研修中の解雇に関する法律
・適正な解雇手続きのステップ
・研修中の解雇を回避するための施策
・ 法律遵守を目指す企業体制の構築
研修の担当者の方、人事担当者の方は参考にしてみてください。
企業が直面する解雇問題とは
初めに、企業が直面する解雇問題について解説します。以下の側面からまとめます。
・研修中の解雇可能性に関するポイント
・正当な理由による解雇の必要性
・不当解雇のリスクと対策
順に見ていきましょう。
研修中の解雇可能性に関するポイント
研修中の解雇が発生する可能性は、様々な要素が複雑に絡み合っています。例として挙げられるのは、研修生のパフォーマンス不足、職務適性の欠如、組織文化への適応困難などです。また企業側の経営状況、業績の悪化、リストラ策の一環といった要因もあります。
しかし研修中の解雇は慎重さを要する行為であり、労働法規的には厳格に制限されています。適法な解雇の基準となる「客観的・合理的な理由」が欠けていると、不当解雇となる可能性があります。
したがって、最初から研修期間の目標や評価基準を明確に設定しそれに沿った評価を行い、解雇の可能性がある場合は早期にコミュニケーションを取ることが重要です。
正当な理由による解雇の必要性
正当な理由による解雇は、企業の人事戦略において重要な概念です。労働契約法によれば、解雇は「合理的な理由」をもとに行われるべきです。解雇理由が具体的、客観的で公正なものでなければ、不当解雇とされます。
不当解雇は従業員にとって大きな精神的、経済的ダメージをもたらすだけでなく企業の人事管理にも影響を及ぼします。また不適切な解雇が社会に暴露されると、企業のブランドイメージやリクルーティングにも悪影響を及ぼす可能性があります。
このため、解雇理由は明確にし、従業員を解雇する前にその理由を詳細に説明することが重要です。また法的リスクを避けるためには、労使協議や予告など、法律が求める手続きを遵守することが不可欠です。
不当解雇のリスクと対策
不当解雇は企業に大きなリスクをもたらします。雇用関係の安定が重視されることから解雇は最終手段とされ、その正当性は厳しく審査されます。不当解雇が認定されると、雇用の返還命令や損害賠償、企業ブランドの評価低下など、経済的及び社会的なダメージが避けられません。
これらのリスクを回避するためには、解雇理由の明確化、解雇手続きの法令遵守、解雇通知の書面化などが必要です。また訴訟リスクを回避するため、労働問題に詳しい弁護士に事前に相談することも重要です。
研修中の解雇に関する法律
次に、研修中の解雇に関する法律について解説します。以下の側面からまとめます。
・労働基準法と研修中の労働者の権利
・労働契約法による解雇制限
・解雇予告手当の必要性と法的条件
順に見ていきましょう。
労働基準法と研修中の労働者の権利
労働基準法は、労働者の権利を保護するための重要な法律です。これは、研修中の労働者にも全面的に適用されます。
たとえば労働者は基本的に解雇の予告を30日前に受ける権利があります。予告期間を省略する場合でも30日分の賃金を支払わなくてはなりません。さらに労働者は労働時間、休憩、休日について法定どおりの保証を受ける権利があります。
これらの注意事項は、研修中であっても適用されますので、企業側は常に法律遵守の視点を持つことが求められます。
労働契約法による解雇制限
労働契約法に基づき、企業が従業員を解雇するには一定の制限があります。研修中であってもこれは例外ではありません。
労働契約法第16条では、「雇用者が労働者を解雇しようとするときは、客観的、合理的な理由をもって行わなければならない」ことが定められています。研修中の評価が十分でない場合や技能不足が明らかな場合でも、解雇に至る前には十分な指導や教育が行われていなければならないとされています。これは、解雇に際しての対象者が研修生であろうと正社員であろうと一切変わりません。
この法律を遵守しない場合、企業は不当解雇として訴訟を起こされるリスクを負います。
解雇予告手当の必要性と法的条件
解雇予告手当は雇用契約の終了を伝える際に労働基準法が定める手続きで、これを遵守しないと不当解雇とみなされる可能性があります。
具体的には、通常は解雇予告を行った日から30日以上を経てから解雇を行わなくてはなりません。しかし解雇予告を省略したい場合には、予告手当(通常の賃金の30日分以上)を支払うことでそれを補うことが法律で認められています。
この予告手当は、解雇を受ける労働者が新たな職を探す時間を確保するために重要なものとされています。したがって、企業は解雇手続きを進める前にこれらの法的要件を理解し適切な手続きを踏むことが大切と言えます。
適正な解雇手続きのステップ
次に、適正な解雇手続きのステップについて解説します。以下の内容についてまとめます。
・解雇通知の方法とその内容
・解雇の予告とその要件
・各種法的期限の遵守
1つずつ見ていきましょう。
解雇通知の方法とその内容
解雇通知の方法とその内容について理解することは、企業が法的トラブルを避けるために重要です。
まず解雇通知は書面にて行うべきです。口頭ではなく明確な書面で通知することで後で争いが生じた場合の証拠にもなります。また通知書には解雇の理由を詳細に記載しなくてはなりません。それは、労働者が解雇の妥当性を判断するための重要な情報となります。具体性を欠いた曖昧な記述は避け、解雇理由がはっきりと分かるように書くことが求められます。さらに解雇の日時も明記し、受け取りを確認するために受領印を押させることも大切です。
これらの手順を踏まえ、公平で透明性のある解雇手続きを実施することで企業の信頼性を保つことが可能です。
解雇の警告とその要件
解雇の警告は、解雇を適正に行う一環として、従業員に対して問題点の指摘・注意指導と改善が見られない場合に解雇する時期を明確に伝えることを指します。解雇した場合に不当解雇とされないために、予告は特定の要件を満たさなければなりません。
具体的には、注意内容が具体的で理解可能であること、警告が適切な時期に行われること、そして警告が書面で通知されることが求められます。たとえばパフォーマンス不足を理由に解雇を検討している場合、その具体的な問題地点と改善が見られない場合の結果を明示する必要があります。また適切な時期とは、従業員が自身の立場を改善するための時間を与えるという意味であり、たとえば3ヶ月前などが一般的です。
これらを遵守しないと、解雇は無効とされる可能性が高くなります。
各種法的期限の遵守
解雇手続きにおける法的期限の遵守は、企業が遭遇する解雇問題の解決策の一つです。法律によって定められた期限を逸脱すると、解雇は無効となり、企業には重大なリスクが生じます。
労働契約法では解雇予告は「30日前に予告するか解雇予告手当を支払う」ことが定められています。また研修期間中の解雇では、明確な評価基準を設け、従業員に期限を通知する等、細心の注意が必要です。
このような法的期限を遵守することで公正な解雇手続きが行われ、不当解雇によるリスクを軽減することが可能になります。
研修中の解雇を回避するための施策
次に、研修中の解雇を回避するための施策についてまとめます。以下の施策があります。
・労働者の評価システムの導入
・コミュニケーションによる問題解決
・研修プログラムの見直し
・解雇以外の代替手段の検討
・アドバイザーや弁護士の活用
1つずつ見ていきましょう。
労働者の評価システムの導入
研修中の解雇を回避するためには、労働者の評価システムの導入が有効です。評価システムを導入することで、研修者のパフォーマンスを客観的に判断し労働者の研修達成度や適性を明確にすることが可能となります。
具体的には、日々の業務遂行における成果やスキル、態度などを評価指標とし、それを定期的にレビューします。それにより進捗を把握し必要なフィードバックや支援を提供することが可能です。また評価結果は解雇理由としての根拠にもなり得ます。
コミュニケーションによる問題解決
企業では、従業員とのコミュニケーションが解雇問題の解決策となり得ます。研修中の従業員のパフォーマンスが期待に達していない場合、即座に解雇を決定するのではなくまずは従業員との対話を試みることが有効です。
これには、定期的なミーティングやフィードバックセッションが役立つでしょう。問題の原因を直接聞き出し解決策を共に考え出すことで、従業員の理解度やモチベーションを高め研修の成果を向上させる可能性があります。また対話を通じて従業員から信頼を得ることで組織内の人間関係を改善し社員の満足度やロイヤルティを向上させることも可能です。
研修プログラムの見直し
研修プログラムの見直しは、研修中の解雇を回避する効果的な手段の一つです。研修内容が問題を引き起こしている可能性があるため、その原因を特定し改善策を講じることが重要です。
たとえば研修の難易度が高すぎる、内容が不適切である、または労働者の能力に合わない場合は、それを改良することで労働者のパフォーマンスを向上させ、解雇のリスクを減らすことができます。
また定期的に研修プログラムを評価し必要に応じて改善を行うことも効果的です。研修プログラムを見直すことで企業は従業員の満足度を高め、生産性を向上させることができます。
解雇以外の代替手段の検討
「解雇」は経営上の選択肢として存在しますが、その適用には十分な配慮が求められます。この代替としていくつかの手段があります。
その一つは「人事異動」です。能力や性格が合わないと判断した場合、他部署への異動を検討することがあります。また「再教育」も一つの手段です。労働者のスキルや知識が不足していると判断した場合、研修や教育の機会を再度提供して改善を図ることが可能です。さらに「退職勧奨」も一つの選択肢となります。
ただしこれらの選択肢を適用する際には、確固たる証拠と合理的な理由が必要であり、労働者の意向を尊重する必要があります。
アドバイザーや弁護士の活用
アドバイザーや弁護士の活用は研修中の解雇を回避するための重要な手段となる可能性があります。
特に、雇用法規や解雇にまつわる法律に詳しい労務コンサルタントや弁護士は、企業が法律に適合した行動を取るための助言を提供します。法的な問題を未然に防ぐだけでなく、万が一法的なトラブルに巻き込まれた際の対策も練ることが可能です。
また労働問題に詳しい専門家は、法律だけでなく従業員との良好な関係を維持しモラルを保つためのアドバイスも提供できます。企業が法的リスクを最小限に抑え、信頼性を保つためには、専門家の意見を参考に行動することが重要です。
法律遵守を目指す企業体制の構築
最後に、法律遵守を目指す企業体制の構築についてです。以下の方法についてまとめます。
・法律に基づく解雇方針の策定
・研修中の評価基準の明確化
・労働契約における明示事項の設置
順に見ていきましょう。
法律に基づく解雇方針の策定
従業員を解雇する際には、法律に基づく解雇方針の策定が必要です。これには、解雇の正当性、手続きの明確化、解雇予告手当、労働者の権利尊重などが含まれます。
たとえば、一部の企業では解雇理由を明確に示す「解雇基準」を設け、それに適合しない場合は非雇用を決定します。
また解雇手続きの明確化は、予告期間の設定やその他の解雇に関する法的義務を果たすための手続きを体系化し、それを従業員に明示することです。
解雇予告手当とは解雇を予告する期間及び手当てのことであり、労働者の権利尊重は、解雇の理由や過程が公平であることを確保することです。
これらのガイドラインを明確に策定し従業員に対して適切に伝えることで、法的なリスクを回避し企業の信頼を保つことができます。
研修中の評価基準の明確化
研修中の解雇問題を避けるためには、研修生の評価基準を明確にすることが必要不可欠です。初めて湧き出る問題や解雇を考える事態を回避するには、企業にとって明示的な評価基準が求められます。これにより研修中の従業員が何を達成すれば良いのか、どのような行動が求められるのかが明確となり、その結果、解雇の理由が曖昧であるという問題を避けやすくなります。
また評価基準の設定に際しては、目標設定理論やKPI(Key Performance Indicator)の設定など、具体的な方法を採用すると良いでしょう。目標設定理論は、具体的で明確な目標を設定することで達成意欲を引き出す理論であり、KPIは業績を定量的に測るための指標です。
労働契約における明示事項の設置
労働契約における明示事項の設置は、予防的な対策として効果的です。契約の段階で、評価基準や解雇の理由、解雇手続きなどを明確にすれば、後になって問題が起きるのを防ぐことができます。
また労働基準法では、労働条件を書面で明示することを求めており、これも労働者の権利保護と企業のリスクマネジメントに貢献します。明示事項の設置は、研修中の解雇問題を未然に防ぐための重要なステップです。
研修は東京ITスクールへ
研修中に解雇するような事態を避けるためには、採用活動の精度を高めることが大切です。自社で求める人物像を明確にして採用活動に臨みましょう。
在籍している社員をそれに近づけ、企業文化を育むことも重要です。既存社員の研修には、東京ITスクールの講座をご活用ください。東京ITスクールでは、実践的な内容を経験豊かなプロ講師が指導します。
東京ITスクールはエンジニア向けのIT研修に強みがありますが、ビジネススキルなどの研修も充実しています。貴社が必要としている内容の研修がきっと見つかることでしょう。
もしもご質問やご興味がございましたら、些細なことでも構いませんので、お気軽にご連絡ください。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。