【研修中の給与】無給・最低賃金以下でも問題ない?法律を確認
公開日:2024年05⽉17⽇最終更新日:2024年05⽉17⽇
研修を受講している間、受講者は製品を生産したり売上を上げたりするわけではありません。そのため、研修の期間は給料を払う必要がないと考えるかもしれません。しかしそれは問題ないのでしょうか。
この記事では、研修中の給料についてまとめます。この記事を読むことで、以下の点について理解できるようになります。
・法律による研修中の給与規定
・無給研修が認められるケース
・最低賃金以下の研修給与の特例
・労使双方のための研修制度設計
研修企画担当者の方、管理職の方は参考にしてみてください。
研修中の給与:無給・最低賃金以下の合法性を探る
まず、研修中の給与について主に法律面からの見解をまとめます。以下のように分けて解説します。
・法律による研修中の給与規定
・無給研修が認められるケース
・最低賃金以下の研修給与の特例
・労働基準法と研修給与
・無給研修を巡る社会的な意見
・労働者保護のための制度
結論から言うと、基本的に給与は必要です。1つずつ具体的に見ていきましょう。
法律による研修中の給与規定
日本の労働基準法では、研修期間中も「労働」と捉えて給与を支払うべきとされています。ただし特定の条件を満たす研修は「労働」ではなく「研修・教育訓練」に当たり、無給または最低賃金以下でも合法的に行えることになっています。
給与の支払い義務が免除される研修は、進学や資格取得を目指す研修など、職務に直接関連がないものや自己啓発の一環となるものが該当します。しかし企業でも労働者でもこの法規制は理解が難しく、実際にはグレーゾーンも多いため、各企業は人事労務専門家の意見を仰いだり、労働局への相談を積極的に行うなどして、法令遵守を確認することが求められます。
無給研修が認められるケース
無給の研修が認められるケースとは、具体的には「労働契約ではない研修・教育」の場合です。参加の指示がある場合、参加後にレポートなどの課題がある場合は強制とみなされ無給は認められません。また形式上自由参加であっても、参加への圧力があったり参加しない場合に実務に悪影響があったりする場合は給料の支払いが必要です。
研修が具体的な業務に直結する場合や、実際の仕事とほとんど変わらない内容を含む場合は「労働」に該当し給与の支払いが必要になるため、注意が必要です。また企業の研修政策や研修内容により、無給研修が認められるケースは変動する可能性があるので、その点も把握しておくと良いでしょう。
最低賃金以下の研修給与の特例
支払額は基本的に各都道府県の最低賃金以上となります。ただし条件を満たしている場合に「最低賃金の減額の特例許可」に申請して許可を得られれば、最低賃金以下の研修給与が認められます。特例とは、以下の2点のいずれかに該当する場合です。
・本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度である
・本採用労働者と比較し、試用期間中の賃金を著しく低額に定める慣行がある
管轄の労働基準監督署に申請書を提出する必要があります。
労働基準法と研修給与
労働基準法では、研修も労働時間に含まれると規定されています。したがって、通常勤務と同じ法律が適用されるという認識が必要です。たとえば研修時間が8時間を超える場合、特定の理由がない限りは法律上、超過労働になります。
また労働者が研修を通じて会社の利益に貢献していると認識された場合、その時間は労働時間とみなされ、給与支払いの対象となります。ただし職員が新たなスキルを習得したり、業務上必要な知識を得るといった個々の利益が主とされる研修の場合、これには給与支払いの義務性が必ずしも存在しないとの判断もあります。該当するかどうかは具体的な研修内容や形態、会社の規定等によります。
これらの点を踏まえ、企業は研修に対する給与支払いのあり方を再考する必要があるだけでなく、その研修が労働基準法に適合しているか常に確認することが大切です。
無給研修を巡る社会的な意見
無給研修についての社会的な意見は様々です。一方で経済的な理由や教育環境を整えるために一時的な無給研修を必要とする企業も存在します。しかし労働者の視点から見れば、労働に対して適切な報酬を受け取るべきとの声が多く出ています。とくに社員のモチベーション維持やリテンションの観点から、正当な対価を与えることが必要だと言えるでしょう。
また無給研修は若者の社会参加を阻害する要因ともなり得るため、問題視する声も上がっています。最近では、無給研修を行う企業に対する社会的な抑制力も高まりつつあり、これを受けて企業側も対応を迫られている状況です。
労働者保護のための制度
労働者を保護する制度としては、労働基準法が最も基本的な規定となります。これはすべての労働者が適正な労働条件で働くことを保障するためのものです。具体的には、最低賃金、休日、労働時間、安全衛生などについて定めており、未払い賃金や長時間労働などの違法行為を防ぐ目的があります。また無給研修などについても規定しており、一定の条件を満たす場合には刑事罰が科されることもあります。
しかし現実には企業が法規定を守らないケースも多く、労働者が知識不足から自己保護できない場面も見受けられます。このような状況対策として、労働者が自己の権利を守るための情報提供や相談窓口設置など、各自治体や労働組合なども労働者保護のための制度を設けています。
労働問題への対策:法律に則った運用
次に、労働問題への対策としてどのように法律に則った運用を行っていくかについてまとめます。以下のように分けて解説します。
・法改正と研修給与への影響
・企業の研修給与対策
・労使双方のための研修制度設計
順に見ていきましょう。
法改正と研修給与への影響
法改正にともない、研修給与にも影響が出てきます。過去には、研修期間中の給与が無給や最低賃金以下となるケースが散見されましたが、現在では労働者保護の観点から、法改正によりそのような状況は少なくなっています。
また現在問題ない対応も、新たに法改正があった場合は法律違反となるケースも出てくるでしょう。法改正の情報収集は怠らないようにしなくてはなりません。
企業の研修給与対策
企業が研修給与について対策を講じる際には、法令遵守は最優先事項です。まず労働基準法の定める最低賃金を確実に支払うこと。給与計算の基礎となる労働時間を明確にし休憩時間や残業時間も適切に管理することが求められます。また研修内容が実質的な労働に該当する場合は、正当な給与を払う義務があります。
社員が研修に集中できる環境を提供するためには、経済的負担を軽減する支援も大切です。交通費支給や教材費の補助、さらには生活支援費の提供など、企業の経済的余裕に応じて検討すると良いでしょう。
労使双方のための研修制度設計
労使双方がウィンウィンの関係を築くための研修制度設計は、企業と従業員双方にとって最適な研修内容と報酬形態を見つけることが鍵となります。
まず企業目線からは、人材育成投資を最大化するために、研修によって提供されるスキルが組織のビジョンや戦略に直結していることを確認することが重要です。一方、従業員にとっては、そのスキルが自身のキャリアパスに合致しまたその努力が適切に報酬へと反映されることが求められます。
企業は最適な研修制度を設計し労使双方が共存共栄できるような研修環境を整えることが求められます。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。