職場内研修「OJT」を成功に導く!効果的な進め方とは
公開日:2024年04⽉25⽇最終更新日:2024年11⽉19⽇
職場内で行われる研修と言えばOJTです。座学の研修などを社内で行うこともありますが、職場ではありません。OJTは職場で行うだけあり、職場で必要となる実践的なスキルを身につけられるというメリットがあります。
この記事では、職場内で行う研修、OJTについて解説します。以下の点を深堀していきます。
・OJTの概要、その目的
・メンタリングの重要性
・効果的なフィードバック
・全社的な参加の必要性
研修の企画担当者の方、OJTの教育係の方はぜひ参考にお読みください。
職場内研修「OJT」の基本理解–目的と重要性
職場内研修「OJT(On the Job Training)」は、現職の従業員が実際の業務を通じてスキルや知識を習得するための教育方法です。その目的は、職場で必要とされる具体的な能力を効率良く身につけることにあります。
さらに職場内研修は新人教育だけでなく、組織全体のスキルアップや組織風土の醸成にも大きな役割を果たします。職場内研修を効果的に行うことができれば、従業員の満足度と維持率を向上させ、企業の生産性と競争力を高めることにつながります。
目的を理解した上で、従業員の実務スキル・仕事への意欲を高められるような研修を考えていきましょう。次のセクションで効果的な職場内研修の組み立て方について解説していきます。
成功するための職場内研修の設計
成功するための職場内研修(OJT)の設計を行うための主要なポイントとしては以下となります。
・職場内研修(OJT)の目標設定
・職場内研修の計画、スケジュールの作成
・講師(指導者)の選定
1つずつ見ていきましょう。
職場内研修(OJT)の目標設定
まずは職場内研修(OJT)を実施する前の準備についてです。
最初に、「職場内研修を通して、従業員にどうなってほしいか」というゴールを明確に設定します。訓練する業務について、研修終了の段階でどれくらい出来るようになることを目指すのか、ということです。
ここが曖昧だと、思うように育成が進まなかったり、研修の効果を適正に評価することも難しくなってしまいます。到達してほしいスキル感やこなせるようになってほしいタスクなど、できるだけ明確に、細かなポイントを設けることで、教える側も教わる側も「何ができたか、何ができていないのか」をしっかりと認識することができます。
研修を通して対応できるようになってほしい業務タスクや、到達してほしいスキルレベルなどのチェックリストを作成することも良い方法です。それを受講者にも共有することで、自分たちが何をするべきか、何のためにこの研修があるのかも明確になります。目標設定は、研修を有意義な機会にするための最も大切な部分と言えるでしょう。
職場内研修の計画、スケジュールの作成
目標設定ができたら、それを達成するための詳細な計画とスケジュールを作っていきます。それぞれのタスクやスキルを教えるためにかかる人的リソースや時間を割り出し、全体的な研修期間・プログラムを決めていきましょう。
業種や仕事の内容によって、適切な期間は異なります。短期間で仕上げたいがために内容を詰め込むことはおすすめしません。受講者のスキルレベルに合わせ、無理のないプランを考える必要があるでしょう。事前にテストやアンケートを行ったり、1on1等で受講者との対話の時間を取ることで、現状が把握しやすくなります。
受講者の状況と研修の内容が大きく乖離しないよう心がけていくことで、研修について行けず途中で脱落してしまうといった状況を避けることが可能です。具体的なプログラムの設計については、この後のセクションで詳しく解説します。
講師(指導者)の選定、教材の準備
具体的なプランができたら、それを受講者に伝えるための講師(指導者)を選定します。プログラムの段階から講師と作ることも良いでしょう。先輩社員から直々にしっかりと教えてもらえることが望ましいですが、教育のための人的リソースが乏しい場合には外部の講師に依頼することも検討しましょう。
講師には、日々の指導を行いながら、受講者のレベル・ニーズに応じて教育プログラムを調整したり、進捗の管理・適切なフィードバックを提供することができる人物が求められます。高い技術や経験年数だけでなく、教育熱心であることや新人の成長を支援し、成長を喜べるような人柄が望ましいでしょう。
目指すべき目標と研修プログラムを講師と共にすり合わせ、より効果を上げられるよう内容をブラッシュアップしながら進めることで、育成の内容もどんどん洗練されていきます。
社内で講師を選定する場合は実業務に精通し、ニーズに特化できる点がメリットですが、外部の講師は育成のノウハウを豊富に持っていることが多く、教育のプロからのフィードバックはとても参考になるでしょう。教育を体系化していきたいと考えている場合は、外部の力を借りることもよい選択です。
職場内研修(OJT)のプログラム構築
次は職場内研修(OJT)のプログラム構築について具体的に解説します。以下の点が挙げられます。
・教育プログラムの設計
・実践的なトレーニング内容の組み立て
・進捗管理と評価の方法
・効果的なメンタリング技術
・フィードバックの重要性と方法
順に見ていきましょう。
教育プログラムの設計
教育プログラムの設計は、職場内研修のメインとなる部分です。研修を通して目指すゴールに基づいて詳細なカリキュラムを構築します。
たとえばエンジニア向けのOJTでは、実際のプロジェクトの中で様々なタスクに対応する中で、実務レベルのコーディングスキルを身に付け、チーム開発の流れを学んでいくケースが多いでしょう。その場合、具体的な技術の名称、その技術を身につけるためのレッスンの内容、スケジュールなどを詳細に設定します。
またプログラムは受講者の既存のスキルや知識に基づいてカスタマイズします。これにより受講者が自分のペースで学べるようにするとともに、必要なスキルを効率的に習得できるようにします。具体的な教育プログラムの設計は、各企業の目指すゴールやニーズによって異なりますが、効果的なプログラム設計はOJTの成功に大いに寄与します。
実践的な育成プランの組み立て
実践的な育成プランの組立にあたり重要なことは、現場の実業務に基づいたトピックを選ぶことと、受講者のスキルレベルに合わせた指導内容を見極めることです。先のセクションでも述べた通り、事前のアンケートやテスト、面談などで現状をしっかりと把握しましょう。
業務で多用する専門用語を理解できているか、ベースとなるスキルは充分に備わっているか、コミュニケーション面はどうか、困ったときに適切な質問ができるかなど、不安要素があれば洗い出しておくことで、職場内研修の前に補講や事前レクチャーなどのフォローを考えることもできます。
業務で使用するツールや、予習しておくべき内容を受講者に伝え、自身でも準備ができるような環境を整えることもおすすめです。事前学習があることでよりスムーズに育成が進めやすくなります。未知の業務に入っていく不安を和らげ、深い業務理解を促すために、受講者の現状と目標レベルのバランスを見ながら設計できるとよいでしょう。
進捗管理と評価の方法
進捗管理と評価は、OJTの効果を高めるための重要なステップです。進捗管理では、指定された目標に対して進行状況を定期的にチェックし、必要に応じて修正を加えます。これには明確な評価基準と、その達成度を見るための尺度が必要となります。
一方、評価は受講者のスキルアップや知識習得の程度を判断するためのものです。評価方法には、定期的なテストや実践テスト、フィードバック等があります。また受講者自身による自己評価を取り入れることで自己啓発の意識を醸成することも可能です。進捗管理と評価を適切に行うことでOJTの効果を最大化し、受講者の能力向上を確実にします。
効果的なメンタリング技術
効果的なメンタリングは、OJTの成功にとって大きな影響を持ちます。そのためには、メンター自身がクリアな視点を持つことが大切です。これは自身の経験や知識を適切に伝えるためのもので、受講者が自ら答えを見つけられるように誘導することで彼らの自己学習能力を向上させます。
またメンターは時に厳しく時に優しく、受講者に対する深い理解と共感を持つことが求められます。受講者の学習過程やパフォーマンスを継続的に評価し、どの部分が改善できるのかを明確にフィードバックします。
そして何よりもメンター自身が常に自己成長を目指し、新たな知識やスキルを学び続ける姿勢が重要です。これにより、受講者に対する信頼感や安心感を醸し出し、良好なメンターと受講者間の関係を保つことができます。
フィードバックの重要性と方法
フィードバックはOJTの成功要因の一つで、その重要性は非常に高いです。フィードバックは行動やパフォーマンスの修正に役立つだけでなく、受講者の自己認識やモチベーションを高める効果もあります。
フィードバックを効果的に行うための一つの方法は、具体的で具体的な情報を提供することです。たとえば受講者の具体的な行動や結果に言及し、それが目標や期待とどのように関連しているかを示すことが重要です。
次にフィードバックはタイムリーに行うことが重要です。これは、行動やパフォーマンスが生じた直後の方が、記憶が鮮明であるため、より有効になります。
またフィードバックは双方向のコミュニケーションを促進することも重要です。これは、受講者がフィードバックを理解し、それに基づいて行動を変えることができるようにするためです。
さらにフィードバックは受講者のストレングスに焦点を当て、同時に改善が必要な領域を識別することも有効です。これにより、受講者は自分の強みを理解し、自己効力感を高めつつ、必要な改善を行うことができます。
以上のことから、フィードバックはOJTの重要な要素であり、それをうまく行うことで受講者の学習と成長を大いに促進することができます。
トラブルシューティングと対応策
職場内研修は非常に有効な教育方法ですが、必ずしも順風満帆に進むわけではありません。設計段階では考慮していなかったリスクが現れたり、予期せぬ問題が生じたりすることもあります。
こうした状況に素早く対応するためには、事前に可能な限り起こりうるトラブルを洗い出し、その対応策を準備しておくことが重要です。これまでの育成の中で、どんなトラブルや困り事があったかも踏まえて準備しましょう。
それでも問題が発生してしまうことはありますので、予めいざという時の共有先や発生時のフローを決めておくことも大切です。問題発生の原因を明らかにするとともに、解決方法を速やかに検討し、再発防止策を講じることでスムーズな進行が可能になります。
モチベーション維持の工夫
職場内研修では、これから取り組んでいく業務について具体的かつ本格的に学んでいきます。内容も多く、多岐にわたる場合が多いでしょう。研修期間中の集中力をキープしつづけられるよう、モチベーションを維持する工夫も大切です。
最も重要なのは、明確な目標とそれを達成するための道筋を受講者に示すことです。何のためにやっているのかわからない勉強や作業は、少なからず苦痛を伴うものです。一つ一つの作業の目的や、プロジェクトの中の位置づけなどを明確に知ることで、積極的に取り組む動機付けとなります。
次に、講師や担当者と受講者との定期的な進捗確認とフィードバックなどのコミュニケーションを行うことです。研修中の良かった点や改善できる点を受講者に示し、困りごとや不明点なども聞き取っていきましょう。「自分達の頑張りをしっかり見てくれているんだ」という安心感と共に、帰属意識の高まりや貢献意欲の向上にも繋がっていきます。
第三に、成果を適切に評価し、適時に評価結果をフィードバックすることも重要です。成果が明確にわかることで、受講者は自己満足感や達成感を得ることができ、さらに次のステップに進むためのエネルギーになります。レーダチャートや担当者などのコメントなども交えて、視覚的に自身の状態がわかるようにすると非常に効果的です。
職場内研修の継続的改善と次への一歩
次に、継続的改善と次への一歩についてです。以下の3点について解説します。
・職場内研修(OJT)プログラムの振り返りと評価
・長期的なスキル向上策
・職場内研修(OJT)による組織全体の活性化
順に見ていきましょう。
職場内研修(OJT)の振り返りと評価
研修の振り返りと評価は非常に重要なステップです。これによりプログラムの効果を把握し、必要な改善点を見つけ出すことができます。振り返りとは、OJTを通じて得られた結果を収集し、分析することを意味します。一方、評価はその結果が目標に対してどの程度達成されたかを測定します。
振り返りと評価は主観的な意見だけでなく、具体的なデータを基に行うべきです。これには、受講者のスキル向上度、満足度、プロジェクトの成果などが含まれます。またこれらの情報を集め、分析するための明確なフレームワークとツールの導入も考慮に入れてください。
以上のような取り組みが、組織全体のスキル向上という目標達成に向けての重要な一歩となるでしょう。
長期的なスキル向上策
長期的なスキル向上策について考える際、持続可能な学習環境の構築が重要となります。これには、継続的な学習の推奨、定期的なスキルチェック、新たな技術や知識のアップデートが含まれます。また個々の成長と共にチームの成長も重視し、相互のスキル向上を促すための交流や共有の場を設けることも有効です。
職場内研修による組織全体の活性化
職場内研修(OJT)は、個々の成長だけでなく、組織全体の活性化にも効果があります。職場内研修では実戦での経験を通じて、具体的な業務スキルを身につけることができますが、同時に、それらの経験から得た教訓や知識を社内で共有することで組織の知識基盤を拡充し、新たなアイデアや改善策を生み出す源泉ともなります。
また職場内研修はメンターとなる上司や先輩の役割も強調します。彼らが新人や後輩の成長を支えることで教える側もまた新たな視点や発見を得ることが多く、このような交流が組織内のコミュニケーションを活性化し、チームの結束力を高めます。
一方で、職場内研修の成功は受講者のみならず、指導者や組織全体の積極的な参画が不可欠です。OJTを通じて新たな知識や技術を獲得した従業員がそれを活用し、成果を上げるためには、その適用を可能にする働きやすい環境や風土の醸成が必要となります。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。