研修の目的とは?効果的な育成のために必要なポイントを解説
公開日:2024年04⽉26⽇最終更新日:2024年12⽉24⽇

企業が人材育成のために研修を実施する際、その目的と設計の重要性は十分に理解しているでしょうか?
この記事を読むことで、
①研修の目的とその意義
②効果的な設計の仕方
③そしてその達成のために何が必要か
を学ぶことができます。人材育成で更なる成果を上げるための一助となれば幸いです。
研修とは何か:目的を理解する
研修とは、主に新入社員や昇進者、異動者など、特定の職務を効率良く遂行するための必要なスキルや知識を習得させるための教育活動のことです。
研修の目的は、参加者のスキルアップと組織全体のパフォーマンス向上であり、新たな役割を担当する者をサポートしたり、既存の職務における効率性を向上させるための手段として活用されます。
それは、プロジェクト管理、リーダーシップ、専門技術など、特定の職業に必要な範囲のスキルを強化する指導から、コミュニケーション能力や忍耐力といった一般的なスキルを強化するための指導まで、様々な形があります。
目的があいまいな研修は効果が出にくい
目的があいまいな研修は、受講する側も自分たちのすべきことがはっきりとせず、モチベーションも上がりにくいです。到達すべきことが不明確では、研修の効果も半減してしまいます。
明確な目的があることで、社員たちは研修を通じて学ぶべきこと、自分がどうなっていけばいいのかがわかり、努力の方向も定まるのです。
目的別:実施方法のポイント
なぜ研修を行うのか、何を達成したいのかをしっかりと定めることで、効果的な研修設計が可能になります。研修の目的別に効果的な実施方法のポイントを以下に解説します。
新入社員の即戦力化を目的とした研修
新入社員向けの研修は、社会人としての基本的なマナーから始まり、業務遂行に必要なスキルを短期間で習得させることが求められます。業種により必要な知識やスキルはさまざまですが、主に以下のステップを踏むことで、即戦力に近づけることができます。
- 基礎知識のインプット
最初に会社の理念や事業内容、社内ルールを座学形式で学びます。ここでは、情報量が多くなりがちなので、資料は簡潔にまとめ、動画や図表を活用するなど工夫をしましょう。
- 実務体験を取り入れる
座学だけでなく、実際の業務をシミュレーションした演習やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を組み合わせます。これにより、実際の業務の流れや課題を理解することができます。
- フィードバックで成長を促す
演習やOJTの後は、適切なフィードバックを行いましょう。フィードバックは、具体例を交えながらポジティブな内容にすると、受講者のモチベーションを高める効果があります。
中堅社員のスキルアップを目的とした研修
中堅社員向けの研修は、専門性の向上や、リーダーシップスキルの習得を重視します。現場での経験がある分、研修内容は具体的かつ実践的である必要があります。
- 課題解決型のアプローチ
現場で直面する具体的な課題をテーマにした研修を行うと、即効性があります。たとえば、「部下のモチベーションを高める方法」や「業務効率を上げるツールの活用法」など、日常業務に直結する内容を選びましょう。
- ディスカッション形式を取り入れる
一方通行の講義形式ではなく、受講者同士が意見交換できるディスカッション形式を導入すると、新しい視点を得られます。実際の事例を基にしたグループワークは特に効果的です。
- ケーススタディで深掘りする
他社や自社の成功・失敗事例を分析し、実務に応用する方法を探ります。これは、新しい知識を定着させると同時に、現場での応用力を高めるトレーニングになります。
管理職のマネジメント力向上を目的とした研修
管理職研修では、組織全体を見渡す視点や、人材育成に必要なコミュニケーション能力の向上を重視します。
- 自己理解から始める
マネジメント力向上の第一歩は、自身のリーダーシップスタイルを理解することです。自己診断ツールや心理テストを活用し、強みや改善点を把握するセッションを設けると効果的です。
- 部下との信頼関係構築スキルを磨く
部下に信頼される上司になるためのコミュニケーションスキルを具体的に教えるプログラムを導入しましょう。たとえば、「傾聴の技術」や「褒め方と叱り方のバランス」などです。
- 経営視点のトレーニング
さらに、管理職には経営視点で考える力も求められます。財務諸表の読み方や、部門のKPI(重要業績評価指標)の設定方法を学ぶ講義を取り入れると、組織全体への貢献意識が高まります。
研修受講後に評価と改善を行う
いずれの目的においても、研修後の評価と改善が重要です。
研修効果を測定するには、以下のポイントを押さえましょう。
- 即時アンケート
受講者にその場で簡単なアンケートを実施し、研修の満足度や改善点を集めます。
- 行動変容の観察
研修後数週間から数カ月を目安に、受講者の行動が変化しているかを確認します。具体的には、業務効率の向上や、コミュニケーションの活発化などの指標を観察します。
- 再研修やフォローアップ
必要に応じて再研修やフォローアップセッションを行い、定着率を高めます。たとえば、eラーニングを活用して学び直しの機会を提供するのも一つの方法です。
研修は、目的に合わせて設計することで初めて効果を発揮します。
「なぜこの研修が必要なのか」を明確にし、その目的に沿った方法を採用することが成功のカギです。また、研修後の評価や改善を忘れず行うことで、より実践的な学びの場を提供することができます。
研修を通じて組織全体の成長を実現し、持続的な成果を目指しましょう。
目標設定の重要性:目的との違い
目的と別に、研修を成功させるために欠かせない要素のひとつが「目標設定」です。目標を設定する際にはまず、「目的」と「目標」の違いを正しく理解することが重要です。
この2つを混同してしまうと、研修内容が曖昧になり、期待する効果を得られなくなる恐れがあります。ここからは、目的と目標の違いを明確にしながら、効果的な目標設定について解説します。
目的と目標の違い
- 目的
研修を実施する「大きな理由」や「ゴール」です。組織やチームが達成したい全体的な成果や方向性を指します。目的は抽象的で広い範囲をカバーするものです。
例:
- 「営業チーム全体のパフォーマンスを向上させる」
- 「新入社員が早期に業務に適応できるようにする」
- 目標
目的を達成するために設定される具体的で測定可能な到達点です。研修終了後に「これができるようになった」と判断できる具体的な基準を示します。
例:
- 「営業チームの提案成功率を20%向上させる」
- 「新入社員が1カ月以内に社内ツールを独力で使用できるようになる」
違いのポイント:
目的は研修全体の方向性を示す羅針盤であり、目標はそれを実現するための具体的な道しるべです。両者を組み合わせることで、研修の設計や実施が効果的になります。
目標設定で重要なこと
研修における目標設定で重要なことはおもに次の3点です。
- 方向性を明確にする
明確な目標があれば、受講者も「何を達成すればよいのか」が具体的に理解できます。これにより、研修内容が理解しやすくなり、受講者の集中力やモチベーションが向上します。
- 成果を測定しやすくする
目標が具体的で測定可能であれば、研修後に成果を評価する基準が明確になります。「学び」が「成果」につながっているかを可視化するためにも、目標設定は欠かせません。
- 改善点を見つけやすくする
明確な目標を基に効果を測定することで、研修内容や方法の改善点を見つけやすくなります。これにより、次回の研修の質をさらに高めることができます。
効果的な目標設定の方法
効果的な目標を設定する際には、「SMARTの法則」を活用すると良いでしょう。
- Specific(具体的であること)
「何を達成するのか」を明確にする。
例: 「クレーム対応スキルを向上させる」ではなく「クレーム対応の平均解決時間を20%短縮する」。
- Measurable(測定可能であること)
数値や具体的な指標を含める。
例: 「プレゼン能力を向上させる」ではなく「プレゼンの満足度アンケートで平均スコアを5以上にする」。
- Achievable(達成可能であること)
現実的な範囲で設定する。
例: 現在解決率50%の問題をいきなり100%にするのではなく、75%に引き上げる。
- Relevant(関連性があること)
研修の目的や業務に直結しているかを確認する。
例: 新規顧客の獲得を目的とする場合、「提案スキル向上」を目標にする。
- Time-bound(期限が設定されていること)
目標達成の期限を明確にする。
例: 「3カ月以内に新規顧客を10件獲得する」。
目標設定の具体例
- 新入社員研修の目標例
- 1カ月以内に、主要な社内ツール(メールシステムやデータベース)を独力で操作できるようになる。
- 研修終了時に、社内業務プロセスに関するテストで80点以上を取得する。
- 営業スキル向上研修の目標例
- 3カ月以内に営業成約率を現在の15%から20%に引き上げる。
- プレゼン資料の作成時間を50%短縮するスキルを習得する。
- 管理職研修の目標例
- 研修終了後1カ月以内に、部下との1on1面談を全員分実施し、面談後アンケートで「満足」と回答した割合を80%以上にする。
- 6カ月以内に、担当部門のKPI達成率を10%向上させる。
研修の目標設定は、「目的」と「目標」の違いを正しく理解することから始まります。目的が研修全体の方向性を示す羅針盤であるのに対し、目標は具体的な達成基準です。
SMARTの法則を活用して効果的な目標を設定することで、研修の成果を最大化できるだけでなく、受講者の成長を具体的に実感できる機会を提供することができます。
目標設定を研修設計の核に据えることで、より質の高い教育体制を実現しましょう。
企業側が社員の成長を継続的にフォローすることで研修の効果をより高める
研修は一度実施すれば終わりではありません。その効果を最大化し、社員の成長を持続させるためには、企業側が研修後も継続的にフォローを行うことが不可欠です。
受講者が学んだ内容を業務に活用し、実践を通じて成長し続けるには、環境や仕組みづくりが必要です。この継続的フォローがなぜ重要で、どのように行うべきかを解説します。
研修後も継続的フォローが必要な理由
- 研修効果の「忘却曲線」を防ぐ
研修で学んだことは、時間の経過とともに忘れられがちです。心理学で知られる「忘却曲線」によれば、新しい知識やスキルは復習をしないと短期間で忘れてしまう可能性が高いと言われています。フォローアップの機会を設けることで、学びを定着させることができます。
- 実践段階での課題を解決する
研修中に学んだ内容を実際の業務に適用する際、社員が新たな課題や疑問に直面することは珍しくありません。継続的なフォローを行うことで、社員がその場で解決策を見つけやすくなり、業務にスムーズに生かせるようになります。
- 成長の確認とモチベーション維持
研修後も上司や企業から成長を評価されていると感じることで、社員のモチベーションが向上します。逆に、フォローがないと「学びっぱなし」になり、成果を感じられずモチベーションが下がることもあります。
効果的なフォローアップの方法
- 1on1ミーティングを実施する
研修後、上司やリーダーが定期的に1on1ミーティングを行い、学んだことが業務に活用できているかを確認します。この場では、受講者の現状や課題、さらなる学びのニーズをヒアリングすることが重要です。
- フォローアップ研修を開催する
研修内容の復習や深掘りを目的としたフォローアップ研修を数カ月後に実施します。たとえば、初回の研修で学んだスキルを使った事例共有や成功体験の発表を行うと、社員同士の学び合いが促進されます。
- eラーニングやオンラインツールの活用
研修内容を振り返るための動画や資料をオンラインで共有したり、受講者専用のチャットグループを設けて質問や意見交換をできる場を提供したりします。これにより、社員は自分のペースで復習や学び直しが可能です。
- 行動変化を測定する仕組みを導入する
研修後に具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に達成状況を確認します。たとえば、営業スキル研修を受けた社員には、成約率や商談数といった数値目標を設けることで、学びの成果を可視化できます。
- ピアサポートを促進する
同じ研修を受けた社員同士が成果や課題を共有し合う場を提供します。これにより、他者の経験から学ぶだけでなく、自分の取り組みを振り返るきっかけにもなります。
フォローアップがもたらす効果
- 学びが組織全体に広がる
社員一人ひとりの成長が促進されるだけでなく、その成果がチームや部門全体に波及します。特に、成功事例を共有する文化が根付くことで、社員同士が互いに学び合う環境が生まれます。
- 離職率の低下につながる
企業が社員の成長をフォローする姿勢を見せることで、社員は自分が大切にされていると感じます。このようなサポートは社員の満足度を高め、離職率の低下にもつながります。
- 組織の競争力が向上する
学びを定着させた社員が活躍することで、組織全体のパフォーマンスが向上します。継続的な成長を支援する企業文化が、長期的な競争力の向上にも寄与します。
研修の効果を最大限に引き出すには、研修後の継続的なフォローが欠かせません。一度学んだ内容を実践で活用し、成果を出すまでの過程を企業側がしっかりと支えることで、社員の成長は加速します。
企業が社員の学びに寄り添い続ける姿勢を示すことは、研修の成功のみならず、社員のモチベーション向上や組織の成長にも大きく貢献します。
研修の目的・目標を明確にして、ねらい通りの育成を
研修の効果を最大化するためには、「何のためにこの研修を行うのか」という目的を明確にし、その目的を実現するための具体的な目標を設定することが不可欠です。
目的と目標をしっかりと定義することで、研修内容が受講者にとって分かりやすくなり、効果的な学びが実現します。
さらに、研修後の継続的なフォローを行うことで、社員が研修で学んだ内容を実践し、成長を続けられる環境を整えることができます。企業として社員の成長をサポートする姿勢を示すことは、個々のスキル向上だけでなく、組織全体のパフォーマンスを底上げする大きな要因となります。
明確な目的を持ち、計画的な目標設定と継続的なフォローを行うことで、ねらい通りの人材育成を実現し、企業の成長を加速させましょう。社員が学びを生かし、成果を出せる仕組みを作ることが、未来への投資となります。
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SEとしてB2Cアプリ開発、金融系システム開発などを経験後、人事部で採用業務を担当。
現在は東京ITスクールの講師として新人研修から階層別研修、人事向けセミナーまで幅広く登壇。
猫を3匹飼っている猫好き。