ビジネスゲーム研修とは?種類と効果的な実施方法
公開日:2024年04⽉04⽇最終更新日:2025年03⽉21⽇

はじめに:なぜ今、ビジネスゲーム研修なのか
「またつまらない研修か…」
社員からこんなため息が聞こえてきませんか?従来型の座学中心の研修に、社員の集中力は続かず、結局は内容を忘れてしまう…。この悩み、多くの経営者や人事担当者が抱えているものです。
そんな中、注目を集めているのがビジネスゲーム研修です。実践的な学びとゲーム性を融合させたこの研修手法は、参加者が楽しみながら学び、驚くほど高い学習定着率を実現します。
私たち中小企業が直面する「人材育成の壁」。限られた予算と時間の中で、いかに効果的な研修を実施するか——その解決策として、ビジネスゲーム研修が注目されています。
この記事では、忙しい経営者の皆さんに向けて、ビジネスゲーム研修の全体像から、導入のコツ、失敗しないための実践ポイントまで、余すところなくお伝えします。
ビジネスゲーム研修とは?基本を理解する
ビジネスゲーム研修とは、実際のビジネスシーンを模したゲーム形式の研修です。参加者はゲームを通じて実践的なスキルや知識を身につけます。
従来型の研修と比較すると、大きな特徴は「体験」にあります。アメリカの教育学者エドガー・デールが提唱した「学習の円錐」によれば、人間は「読む」だけでは10%、「聞く」だけでは20%しか記憶に残らないとされています。
一方、「体験する」ことで75%もの学習定着率が期待できるのです。
ビジネスゲーム研修のメリット
- 高い学習定着率 – ゲーム形式で楽しみながら学ぶため、内容が記憶に残りやすい
- 主体的な参加 – 受け身ではなく能動的に参加するため、モチベーションが維持される
- 実践的なスキル習得 – 理論だけでなく、実践に近い形で学べる
- チームワークの向上 – 多くのゲームがチーム単位で行われるため、協力関係が強化される
- 即時フィードバック – 行動の結果がすぐに見えるため、学びが深まる
「うちの会社には合わないのでは?」と思われるかもしれませんが、ビジネスゲーム研修は規模や業種を問わず、あらゆる企業で効果を発揮します。特に中小企業では、限られたリソースの中で最大限の効果を得られる点が魅力です。
人気のビジネスゲーム研修の種類
ビジネスゲーム研修には多様な種類があります。目的やスキルに合わせて最適なものを選ぶことが大切です。代表的なビジネスゲームを、目的別に見ていきましょう。
リーダーシップを鍛えるゲーム
リーダーシップを育成するためのゲームは、特に管理職や将来の幹部候補に効果的です。
・バズクリエイターゲーム
参加者がマーケティングチームとなり、限られた予算と時間の中で話題を生み出すプロジェクトを運営します。リーダーは状況判断とチーム全体のパフォーマンスを最大化する決断力が問われます。
・NASAゲーム
月面に不時着した宇宙飛行士が生き残るために、様々な装備の優先順位を決めるゲームです。個人→チームでの意思決定プロセスを通じて、リーダーシップとコンセンサスの重要性を学びます。
このようなゲームを通じて、参加者はプレッシャーの中での意思決定や、チームを目標達成へと導くためのコミュニケーション力を実践的に学ぶことができます。特に課長や部長クラスの方には、机上の理論ではなく「実践」の場として最適です。
コミュニケーション力を高めるゲーム
コミュニケーションスキルは、どんな職種でも必要不可欠です。
・ブリッジビルディング
2つのチームに分かれ、互いに見えない状態で橋の両端を作り、最終的に接続することを目指します。限られた情報の中で正確にコミュニケーションを取る力が鍛えられます。
・バックツーバック描画
2人1組になり、背中合わせで座ります。一方が絵を描き、もう一方は口頭での説明だけを頼りに同じ絵を描くゲームです。明確な指示と質問の重要性を体感できます。
こうしたゲームは、日常のビジネスシーンでよくある「伝えたつもり」と「理解したつもり」のギャップを明らかにし、より効果的なコミュニケーション手法を身につける機会となります。
問題解決力を養うゲーム
複雑な問題を解決する力は、ビジネスパーソンの核となるスキルです。
・脱出ゲーム型研修
制限時間内に様々な謎やパズルを解いて「脱出」するゲームです。チームで協力しながら論理的思考を駆使して問題解決に取り組みます。
・ビール工場ゲーム
サプライチェーンの流れをシミュレートするゲームで、在庫管理や生産計画の難しさを体感しながら、システム思考を学びます。
こうしたゲームを通じて、複雑な問題を分解し、チームで効率的に解決するプロセスを体験できます。特に現場のリーダーには実践的な問題解決のトレーニングとなります。
プロジェクト管理を学ぶゲーム
プロジェクト管理スキルは、現代のビジネスでは必須の能力です。
・ペーパータワー
限られた材料(紙とテープなど)と時間の中で、最も高いタワーを建設するゲームです。計画立案、リソース配分、時間管理などのプロジェクト管理の基本が学べます。
・商品開発シミュレーション
架空の商品開発プロジェクトを複数チームで競い合うゲームです。市場調査、企画、開発、マーケティングなど一連のプロセスを短時間で体験することで、全体最適の視点を養います。
チームビルディングに効果的なゲーム
チームの結束力を高めることは、生産性向上の鍵となります。
・無人島生存ゲーム
無人島に漂着したシナリオで、生存に必要なアイテムの優先順位をチームで決めるゲームです。多様な意見の調整と意思決定プロセスを学びます。
・マシュマロチャレンジ
スパゲッティ、テープ、紐とマシュマロを使って、最も高い自立構造物を作るゲームです。チームの協力体制と試行錯誤のプロセスが重要になります。
これらのゲームは、チームの一体感を醸成するだけでなく、メンバー間の信頼関係構築にも役立ちます。特に新チーム結成時や組織変更後のチーム強化に効果的です。
ビジネスゲーム研修の実施方法:成功の鍵
ビジネスゲーム研修を効果的に実施するためのポイントをご紹介します。
ビジネスゲーム研修の事前準備:目的の明確化
ビジネスゲーム研修を始める前に、次のポイントを明確にしておくことが重要です。
- どのような能力やスキルを向上させたいのか
- 参加者のレベルや経験はどの程度か
- 研修後に期待する行動変容は何か
「なんとなく面白そうだから」ではなく、明確な目的に基づいてゲームを選定することで、研修効果が大きく変わります。
適切なゲーム選び
目的に応じた適切なゲームを選ぶことが成功の秘訣です。
- 参加者数に合ったゲームか
- 必要な時間内に実施できるか
- 会社の文化や雰囲気に合っているか
- オンライン研修の場合は、リモート環境でも実施可能か
特に中小企業では、手軽に実施できるものや、無料で試せるゲームから始めるのもおすすめです。インターネット上には多くの無料リソースが公開されていますので、まずは小規模に試してみるのも良いでしょう。
効果的なファシリテーション
ゲームの進行役(ファシリテーター)の役割は非常に重要です。
- ルールを明確に説明する
- 全員が参加できる環境を作る
- 適切なタイミングでヒントを出す
- 時間管理を徹底する
ファシリテーターは、必ずしも外部講師である必要はありません。社内の人材でも、事前に十分準備をすれば効果的に実施できます。
ビジネスゲーム研修:振り返りの重要性
ビジネスゲーム研修の真の価値は、ゲーム後の「振り返り」にあります。
- ゲーム中に何が起こったか
- どのような判断や行動が結果に影響したか
- 実際の業務にどう活かせるか
この振り返りを通じて、ゲームで得た気づきを実践に結びつけることができます。以下のような質問を投げかけると効果的です。
「このゲームで最も難しかった場面は?」 「チームとして上手くいった点、改善できる点は?」 「明日からの業務で、どのように活かせそうですか?」
ビジネスゲーム研修の導入事例と成功のポイント
実際にビジネスゲーム研修を導入して成功した企業の事例から学びましょう。
製造業A社の事例:リーダーシップ強化
課題:中間管理職のリーダーシップ不足 導入したゲーム:工場シミュレーションゲーム
成果:
- 現場リーダーの決断力が30%向上
- チーム間のコミュニケーションエラーが減少
- 生産効率が15%改善
成功のポイント: 現場に近いシミュレーションを選んだこと、そして研修後3ヶ月間、定期的にフォローアップミーティングを実施したことで、学びを定着させることができました。
IT企業B社の事例:プロジェクト管理能力の向上
課題:プロジェクト納期遅延の常態化 導入したゲーム:ソフトウェア開発シミュレーション
成果:
- プロジェクト納期遵守率が60%から85%に向上
- チーム内でのタスク分担が明確化
- 顧客満足度の向上
成功のポイント: 実際のプロジェクト事例をベースにゲームをカスタマイズしたこと、そして全部門からの参加者を混ぜることで、部門間の理解促進にもつながりました。
小売業C社の事例:接客スキルの向上
課題:顧客対応の質にばらつきがある 導入したゲーム:ロールプレイング型接客ゲーム
成果:
- クレーム対応成功率の向上
- 顧客満足度調査のスコア改善
- スタッフのコミュニケーション自信度アップ
成功のポイント: 実際に起こりうる難しい接客シナリオを複数用意し、段階的に難易度を上げていったこと。また、成功事例をチーム内で共有する文化が根付きました。
ビジネスゲーム研修、失敗しないためのポイント:よくある課題と対策
ビジネスゲーム研修を実施する際によくある課題と、それを乗り越えるための対策をご紹介します。
「ゲームで遊んでいるだけ」という認識
課題:
参加者やマネジメント層から「研修ではなく遊びではないか」という懸念が出ることがあります。
対策:
- 研修の冒頭で明確な学習目標を共有する
- ビジネスゲームと実務の関連性を具体的に説明する
- 振り返りの時間を十分に確保し、学びを言語化させる
参加者の温度差
課題:
積極的に参加する人と消極的な人の差が生まれることがあります。
対策:
- 全員が発言する機会を設ける
- 様々な役割を用意し、得意分野で貢献できるようにする
- チーム編成を工夫し、バランスの良いチームを作る
オンライン実施の難しさ
課題:
リモートワークが増える中、オンラインでのビジネスゲーム研修の実施に課題を感じる企業も多いです。
対策:
- オンライン専用にデザインされたゲームを選ぶ
- ブレイクアウトルームを活用し、少人数で密なコミュニケーションを促す
- デジタルツールを活用したボードゲーム型の研修を取り入れる
効果測定の難しさ
課題:
ビジネスゲーム研修の効果を客観的に測定することが難しいと感じる経営者も多いでしょう。
対策:
- 研修前後でのスキル自己評価を実施する
- 具体的な行動指標を設定し、変化を追跡する
- 3ヶ月後、6ヶ月後のフォローアップ調査を実施する
ビジネスゲーム研修をより効果的にするためのコツ
より効果的なビジネスゲーム研修にするための実践的なコツをご紹介します。
理論と実践の組み合わせ
ビジネスゲームだけでなく、適切な理論的背景を組み合わせることで、学習効果が高まります。
例えば、リーダーシップゲームの前に「状況対応リーダーシップ理論」の基本を学んでおくと、ゲーム中の行動と理論を結びつけやすくなります。
段階的な難易度設定
参加者のレベルに合わせて、難易度を段階的に上げていくことが重要です。
- 初級:基本ルールを学び、成功体験を得る
- 中級:予期せぬ状況変化を加え、適応力を鍛える
- 上級:複雑な要素を追加し、高度な判断力を養う
実務への橋渡し
ゲームでの学びを実務に活かすための「橋渡し」を意識的に行います。
- ゲーム終了後、「明日から取り入れられる行動」を具体的に考えさせる
- 1週間後、1ヶ月後の小さな成功体験を共有する会を設ける
- 「ゲームで学んだこと実践シート」を作成し、定期的に振り返る
社内ファシリテーターの育成
外部講師だけでなく、社内でビジネスゲーム研修を継続的に実施できる体制を作ることも有効です。
- 研修に興味のある社員をアシスタントとして参加させる
- ファシリテーションスキルの研修を実施する
- 簡単なゲームから始めて、徐々に経験を積ませる
ビジネスゲーム研修のトレンドと今後の展望
ビジネスゲーム研修は常に進化しています。最新のトレンドと今後の展望を見ていきましょう。
デジタル化の進展
コロナ禍を経て、オンラインでのビジネスゲーム研修が急速に発展しています。クラウドベースのツールやバーチャルボードゲームプラットフォームを活用することで、場所を選ばず効果的な研修が可能になっています。
AIの活用
AI技術の発展により、参加者の行動パターンを分析し、パーソナライズされたフィードバックを提供するビジネスゲームも登場しています。これにより、より効果的な学習体験が提供できるようになっています。
VR/ARの導入
バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)技術を活用したビジネスゲームも増えています。特に危険を伴う作業のトレーニングや、普段体験できない状況のシミュレーションに効果を発揮しています。
マイクロラーニングとの融合
短時間で完結する「マイクロビジネスゲーム」と、日常的な学習を組み合わせる手法も注目されています。15分程度で実施できるゲームを定期的に行うことで、継続的な学習効果を高める取り組みです。
まとめ:ビジネスゲーム研修を成功させるためのロードマップ
ビジネスゲーム研修を成功させるためのステップをまとめます。
課題と目的の明確化
自社の課題は何か、どのようなスキルを向上させたいのかを明確にする
適切なゲームの選定
目的、参加者のレベル、使える時間と予算に合わせたゲームを選ぶ
入念な準備
必要な備品、時間配分、ファシリテーションの流れを事前に確認する
効果的な実施
全員が参加できる環境を作り、適切なサポートとファシリテーションを行う
深い振り返り
ゲームでの体験を言語化し、実務への応用を考える時間を十分に設ける
フォローアップ
研修後も定期的に学びを振り返り、実践への定着を図る
ビジネスゲーム研修は、ただのゲームではなく、実践的な学びの場です。適切に計画し実施することで、従業員のスキルアップだけでなく、組織文化の活性化にもつながります。
限られた予算の中で最大限の効果を得たい中小企業こそ、ビジネスゲーム研修の導入を検討してみてはいかがでしょうか。従業員が楽しみながら学び、その学びが実際のビジネスパフォーマンス向上につながる—そんな好循環を生み出す第一歩になるはずです。
明日からでもすぐに試せる簡単なビジネスゲームも多くありますので、まずは小さく始めて、徐々に自社に合ったプログラムを作り上げていくことをおすすめします。
ビジネスゲーム研修に関するよくある質問(FAQ)
Q1: ビジネスゲーム研修は小規模な会社でも実施できますか?
A: はい、小規模な会社でも十分に実施可能です。むしろ少人数だからこそ、全員が積極的に参加できるメリットがあります。市販のゲームでなくても、簡易的なものであれば無料で入手できる資料や本を参考に、自社で開発することも可能です。
Q2: ビジネスゲーム研修の適切な時間はどれくらいですか?
A: ゲームの種類にもよりますが、導入説明15分、ゲーム実施30〜60分、振り返り30分程度が一般的です。半日研修であれば、複数のゲームを組み合わせることも可能です。重要なのは振り返りの時間を十分に確保することです。
Q3: オンラインでも効果的にビジネスゲーム研修を実施できますか?
A: はい、オンライン専用にデザインされたビジネスゲームも多く存在します。Zoom等のブレイクアウトルーム機能や、オンラインホワイトボードツールを活用することで、対面と遜色ない効果を得ることができます。
Q4: ビジネスゲーム研修の効果をどのように測定すればよいですか?
A: 短期的には参加者の満足度やフィードバック、中長期的には具体的な行動変容や業績指標の変化を追跡することで効果測定が可能です。研修前に明確なKPIを設定しておくことが重要です。
Q5: ビジネスゲーム研修を始めるのに最適な本やリソースはありますか?
A: ビジネスゲーム研修に関する入門書や専門サイトが多数あります。「ビジネスゲーム入門」「チームビルディングゲーム集」などのキーワードで検索すると、無料でダウンロードできる資料も見つかります。まずは手軽に始められるものから試してみることをおすすめします。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。