企業内大学とは?導入するメリットや課題を解説
公開日:2023年08⽉28⽇最終更新日:2023年08⽉28⽇
近年、人材育成に力を入れるため、企業内大学を設置する企業が増えています。企業内大学は、アメリカで始まった人材育成システムです。
本記事では、企業大学の概要のほか導入するメリットや課題を解説します。人材育成に力を入れたい企業の担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。
企業内大学とは?
企業内大学とは、企業が社員の教育のために設立する教育機関を指します。企業内大学では、業務に役立つ専門知識や技術の習得はもちろん、リーダーシップやコミュニケーションスキルなど、さまざまなことを学べるのが魅力です。
実際に導入されている企業内大学の事例には次のようなものがあります。
- 日本マクドナルド株式会社の「ハンバーガー大学」
- ソフトバンク株式会社の「ソフトバンクユニバーシティ」
- 博報堂の「HAKUHODO UNIV.」
- 株式会社ローソンの「ローソン大学」
- 東芝ソリューション株式会社の「Toshiba e-University」
企業内大学通して従業員のスキルや知識が向上すれば、企業全体の競争力も向上します。また、自社の研修で成長やキャリアパスが実感できるようになるため、離職率を低下させるのにも役立つのが企業内大学の大きな魅力です。
企業内大学と従来の研修の違い
目的の違い
- 企業内大学の目的:社員自ら学ぶの場の提供
- 従来の研修の目的:業務に必要な知識・スキルの獲得
企業内大学の目的は、社員みずから進んで学習することを促し、将来のキャリアアップにつなげることです。全社員が自分の興味関心に合わせて学ぶ内容を選べるので、モチベーションを維持しながら新しい知識やスキルを身につけられます。
一方、従来の研修の目的はビジネスマナーや通常業務に必要なスキルの向上を目的に行われるものです。OJT(On the Jov Training)などが広く行われていますが、通常業務に必要な知識・スキルを中心に学ぶことしかできないため、従業員が高いモチベーションで参加するのが難しいという違いがあります。
講師の違い
- 企業内大学の講師:外部講師または社内の優秀な従業員に講師を依頼する
- 従来の研修の講師:外部講師に依頼するのが一般的
企業内大学の場合、外部講師に講師を依頼することもありますが、優秀な社員を講師に起用するケースも少なくありません。自社の従業員を講師に起用すると現場で役立つ知識やノウハウが共有できるため、受講者も大きな学び・気付きが得やすいというメリットがあります。
一方、従来の研修では外部講師に依頼するのが一般的です。専門講師による質の高い講義が受けられるというメリットがありますが、内容が一般向けで、自社のニーズに合わないこともあるので研修前の入念な打ち合わせが研修の成否を左右します。
講義内容の違い
- 企業内大学の講義内容:従業員の要望やニーズに合わせた内容
- 従来の研修の講義内容:企業が抱える課題を解決するために必要な内容
企業内大学と従来の研修では、講義内容も異なります。
企業内大学の講義内容は、従業員の要望やニーズをヒアリングし、それに合わせて設定されるのが一般的です。そのため、従業員が能動的に学びやすくなります。
一方、従来の研修は企業の抱える課題を解決するのに必要な知識やノウハウをレクチャーする講義がほとんどです。そのため、内容によっては従業員のモチベーションが低いままだったり、受け身の受講になってしまうケースが少なくありません。
企業内大学を設立するメリット
企業内大学を設立するメリットを、企業側・従業員側それぞれの視点で解説します。
企業側のメリット
企業側にとってのメリットは、主に3つです。
- 従業員の能力向上につながる
- 次世代のリーダー育成に役立つ
- 採用活動のアピールにつながる
企業内大学で意欲のある従業員がスキルを磨き、知識をアップデートすることは、従業員の能力向上にとても役立ちます。
また、難しいリーダー育成の場としても活用できるのも大きなメリットといえるでしょう。経営層自らが教壇に立って講義を行えば、自社の経営マインドやリーダーに求めるスキルなどを徹底的に教えられます。
人手不足が叫ばれる今、優秀な人材の多くは自らが成長につながる環境を用意している企業に応募する傾向があります。企業内大学を設置すると、成長意欲の高い人材への大きなアピールポイントになることも、企業内大学を設置する大きなメリットです。
従業員側のメリット
従業員にとっても、企業内大学に参加することは次のようなメリットがあります。
- 自身のキャリアアップ・スキルアップにつながる
- 他の部署の従業員と知り合うきっかけになる
企業内大学では、業務に必要なスキルや知識の講義だけでなく、社員のニーズ・要望に合わせた講義も行われるため、より能動的に学ぶことができるでしょう。
企業内大学で学んだことを、今度は社内講師として後輩にレクチャーすることが、自身のキャリアアップにつながるケースも珍しくありません。
キャリアアップ・スキルアップのために転職をする人も少なくありませんが、企業内大学がある企業であれば、転職活動をせずにスキルアップできるのもメリットといえるでしょう。
また、企業内大学で他の部署の従業員と知り合うことが、業務のポジティブな影響を与えることもあります。普段の業務で接点のない部署の従業員と知り合うことで、日ごろの業務に関しても連絡や相談しやすい環境ができ、社内のつながりや一体感が得られるのもメリットです。
企業内大学を設立する際の課題
企業内大学を設立するには、大きく3つの課題があります。
- コストがかかる
- カリキュラムの選定や制度の構築が難しい
- 講師選びが難しい
以上を解説します。
コストがかかる
企業内大学を設置する1番の課題は、コストがかかることです。
設立・運営には、人・金・時間それぞれのコストがかかります。将来への投資と捉えて、経営資源を割くだけの価値があるか十分に考えたうえで、設立することが重要です。
カリキュラム選定や制度の構築が難しい
カリキュラム選定や制度の構築が難しい
企業内大学では、社員の要望やニーズに合わせてさまざまなカリキュラムを設置するのが一般的です。しかし、カリキュラムの数が多くなればなるほど、カリキュラム選定や講師の選定、受講履歴の管理などが難しくなります。
地方に支社がある企業であれば、オンラインで講義が受けられる仕組みを整えるなど、受講を希望する従業員が受講しやすい制度を作ることも欠かせません。
講師選びが難しい
企業内大学の講師を選出することは、容易ではありません。特に社内講師の場合は、講師経験のある従業員を探すことが難しいでしょう。
優秀な社員を講師に起用する場合でも、仕事ができるからといって教えるのも上手いとは限らず、本人が講師に起用されるのを望まない場合もあります。
外部講師に依頼する場合、講義の内容が一般的で自社のニーズにそぐわない場合もあるなど、企業内大学の講師選びは一筋縄でいかないことが少なくありません。
企業内大学の効果的な運用方法
企業内大学を効果的に運用するには、いくつかポイントがあります。
- 積極的に学ぶ意欲がある人を中心に運用する
- 全従業員が参加できる仕組みを整える
- 多様な学び方ができる仕組みを整える
- 学ぶ人のニーズに合わせた講座を開講する
- 目的を明確にしてカリキュラムを設定する
- キャリアアップをサポートする体制を整える
以上のポイントを解説します。
積極的に学ぶ意欲がある人を中心に運用する
企業内大学を運用する場合は、積極的に学ぶ意欲がある人を中心に運用しましょう。参加者が学びたいことや、講義に期待することを事前にヒアリングし、それに合わせてカリキュラムを設定してください。
実際に、学ぶ意欲がある人を中心に運用されている企業内大学は利用率が高く、多くの講座が満席になることも珍しくありません。
やる気がある人のやる気をしっかり受け止め、成長を促すような企業内大学が設置できれば、優秀な人材も育ちやすくなります。
全従業員が企業内大学に参加できる仕組みを整える
企業内大学を運用する際は、その企業に勤めるすべての従業員が参加できる開かれた仕組みを整えましょう。派遣社員やパート、アルバイトも含めた全従業員に学びの機会を与えることで、企業理念の浸透や組織全体の育成が図れます。
多様な学び方ができる仕組みを整える
コロナ禍以降、テレワークや完全リモート勤務といった多様な働き方も徐々に浸透してきました。企業内大学を運営する際は、できるだけ多様な学び方ができる仕組みを整えることも重要です。
地方に支社のある企業であれば、オンラインで講義に参加できるようにしたり、動画で講義を配信したりするのもよいでしょう。
ただ講義を聞くだけでなく、ディスカッションやディベートをしたりする講義も実施すれば、より多様な学び方ができるようになります。
経験豊富な人を講師に選任する
外部講師に講義を依頼してもよいですが、内容が一般的なものになりやすく、企業のニーズに応えられないことがあります。企業内大学を運用する際は、できるだけ社内の経験豊富な人材に講師を依頼するとよいでしょう。
新しい知識を習得することも重要ですが、社内の暗黙知を次の世代に伝えることはそれよりはるかに重要です。
専門知識を持つ従業員や経験豊富な従業員を選任し、必要に応じて研修講師としてのトレーニングを実施するようにしましょう。
目的を明確にしてカリキュラムを設定する
どんなカリキュラムを実施するかは企業の自由ですが、それぞれのカリキュラムには必ず明確な目的を持たせましょう。ただ講義を増やすだけでは、キャリアアップ・スキルアップにつながらないものになってしまうことも珍しくありません。
カリキュラムを設定するときは、その講義を通じて何を身につけてほしいのかを明確に設定し、打ち出すことが重要です。
明確な目的があることで、従業品も能動的に学習しやすくなるでしょう。
キャリアアップをサポートする体制を整える
企業内大学を運用する際は、受講後のキャリアアップをサポートする体制も整えましょう。
学習の機会を与えるだけでなく、企業内大学で学んだことを実践する機会を与えてください。習得した知識やスキルがキャリアアップにつながる仕組みができていれば、受講者のモチベーションがより高まります。
また、上司が部下の受講履歴にアクセスできるようにするのも効果的です。受講履歴を1on1ミーティングやキャリア面談に生かせば、より具体的かつ有用なアドバイスができるでしょう。
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企業内大学を通じた人材育成で企業の成長を実現しよう!
すべての従業員に等しく学びの機会を与える企業内大学は、今大きな注目を集めている教育制度です。
企業内大学を設置・運用すると、次のようなメリットが得られます。
企業側のメリット
- 従業員の能力向上につながる
- 次世代のリーダー育成に役立つ
- 採用活動のアピールにつながる
従業員側のメリット
- 自身のキャリアアップ・スキルアップにつながる
- 他の部署の従業員と知り合うきっかけになる
設立・運用するにあたっては、次のポイントを押さえておくことが重要です。
積極的に学ぶ意欲がある人を中心に運用する
全従業員が参加できる仕組みを整える
多様な学び方ができる仕組みを整える
学ぶ人のニーズに合わせた講座を開講する
目的を明確にしてカリキュラムを設定する
キャリアアップをサポートする体制を整える
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現場SEとして活躍する傍ら、IT研修講師として多数のIT未経験人材の育成に貢献。
現在は中小企業を中心としたDX、リスキリングを支援。
メンターとして個々の特性に合わせたスキルアップもサポートしている。
趣味は温泉と神社仏閣巡り。