面接官研修とは?カリキュラム設計・実践トレーニングを徹底解説
公開日:2024年03⽉26⽇最終更新日:2024年11⽉21⽇
現在は労働人口の減少と人材不足が続き、将来的にも改善される兆しはありません。そのため、社員採用において応募者と直接接する面接官は自社の未来を担う最前線にいると言ってもよいでしょう。高い水準のスキルや知識、倫理観などが求められます。
この記事では、面接官研修についてまとめます。具体的には、以下の内容について解説します。
・面接官研修の必要性
・面接官研修のカリキュラム設計
・面接官スキルの向上
・実践トレーニングとフィードバック
面接官のスキルを高めるために役立つ知識についてまとめます。研修や面接の担当者の方は参考にしてみてください。
採用を考える上での、面接官研修の必要性
面接官研修は企業の採用成功に大きく影響します。良い人材を採用するためには、適切な研修を受けた面接官が必要です。面接官研修により企業は適材適所の人材を採用することが可能となり、組織の生産性向上や成長につながります。また、候補者が企業とのフィット感を感じ、オンボーディングがスムーズに進むことも期待できます。
以下の2点について解説します。
・良い面接官とは
・面接官研修の対象者
順に見ていきます。
良い面接官とは
良い面接官とは、候補者の能力や適性を的確に見極め、公平で効果的な選考を行える人物です。
具体的には、以下のような特徴があります。
① 明確な基準を持っている
面接において、応募者をどのように、どんな点で評価するかを明確にしていることは良い面接官の必須条件と言えます。
求めるスキルや経験、企業文化に合う人材のイメージを事前に定義します。
また、質問内容が一貫していて、全ての候補者に対して明確な基準に沿った評価をすることができるため、求める人材と実際に採用する人材のギャップが少なく、入社後の定着率も高い傾向にあります。
② コミュニケーション力が高い
面接はどうしても緊張しがちな場面です。良い面接官は候補者の話を上手に引き出し、本来の自分を発揮できるような働きかけができます。
しっかりと傾聴し、適切なタイミングで深掘り質問をすることで候補者の人となりや能力を理解します。
柔らかな口調・表情を心がけ、軽い雑談なども交えながらリラックスして受け答えができるような雰囲気作りができることも特徴です。
③ 会社の魅力を伝えられる
良い面接官は、入社後の仕事内容や社風、期待される役割を具体的に説明できます。また、採用したい明確な理由を伝えるとともに、候補者が入社後のキャリア形成や成長をイメージできるよう、会社の魅力をしっかりと伝えることができます。
就活では複数の企業を同時進行で受けることがほとんどなので、面接を通して、「ここに是非入社したい!」という気持ちにさせられるかどうかは、面接官の力によるところも大きいでしょう。
面接官研修の対象者
面接研修の対象者は、新たに人事職に配属された社員だけでなく、経験豊富な人事担当者や採用担当者にも広げるのが望ましいと言えます。なぜなら、面接のスキルは定期的な研修で維持・向上させる必要があり、新たな採用トレンドや法制度の理解も必要だからです。
また、マネージャーやリーダー職の人々も対象に含まれます。彼らは部下やチームメンバーの採用に関与することが多いため、適切な面接技術を身につけることで効果的な人材採用につながります。
面接官研修のカリキュラム設計
次に、面接研修の効果的なカリキュラム設計について解説します。具体的には、以下の点がポイントとなります。
・研修プログラムの目標設定
・面接プロセス全体の理解
・応募者分析と質問の準備
・非言語コミュニケーションの重要性
・面接中の状況対応
・バイアスとその回避方法
1つずつ解説していきます。
研修プログラムの目標設定
研修の目的が明確であれば、その目的に合わせたカリキュラムを設計することが可能になります。具体的な目標の例としては、以下のようなものが挙げられます。
・面接技術の向上
・応募者への理解を深める
・選考結果の品質向上
・集団面接での対応力養成
より具体的に数値などを使い、定量的に評価できる目標設定が適切です。目標設定は面接官研修が具体的な成果を上げるために非常に重要な工程であると言えます。
面接プロセス全体の理解
面接プロセス全体の理解は、面接官としてのスキルを高める鍵となります。面接はただ応募者に質問をするだけでなく、会社のビジョンを伝え、応募者の適性やスキルを評価する重要なプロセスです。面接官は事前に面接の目的や進行のフローを把握することで、面接をスムーズに進行させ、応募者から必要な情報を引き出せるようになります。
さらに、面接プロセス全体の理解を深めることで、応募者が面接から得る印象や経験を向上させることが可能です。これにより応募者が会社にポジティブな印象を持ち、選考結果に関わらずブランドイメージを向上させることが期待できます。
具体的には、面接前の応募者への準備、面接中の質問の選択や進行、面接後のフォローアップなど、プロセス全体のストーリーテリングの計画を研修内容に組み込みましょう。
応募者分析と質問の準備
応募者分析と質問の準備は、面接官研修の重要な部分です。志望者の背景を理解し、適切な質問を設計することで、候補者の適性を適切に評価することが可能となります。
具体的には、応募者の履歴書や職務経歴書を細かく解析し、その経験や能力が自社の求める職務に適合するか予測します。またその過程で、職務内容に関連する質問や候補者のモチベーションを探るための質問を準備します。
研修には、応募者分析の手法や質問を準備するための考え方・履歴書の見るべきポイントの解説を取り入れましょう。
非言語コミュニケーションの重要性
非言語コミュニケーションとは、文字や言葉以外の要素で情報を伝達することを指します。具体的には次のような手段があります。
・ジェスチャー
・表情
・視線
・身体の姿勢
・声のトーン
面接では、応募者の言葉だけでなく、非言語的なサインも重要な情報源となります。さらに、面接官自身の非言語コミュニケーションも応募者への印象に大きく影響を与えます。したがって、非言語コミュニケーションを適切に理解し、使いこなすことが求められます。
面接中の状況対応
面接中の状況対応は、高度な対応力と判断力が求められる領域です。応募者の反応や表情、言葉の選び方などを見て、面接の流れを適切にコントロールする能力が必要です。
例えば応募者が緊張している場合、面接官が適度にリラックスさせるような雰囲気作りをすることが求められます。また突然の質問に対しても適切に対応し、質問の目的を忘れずに進行することが重要です。微妙な状況変化に対して即座に対応し、面接をスムーズに進行させることが求められます。
この能力は、繰り返しの実践とフィードバックによって養われます。各企業の面接官研修で、このポイントを重視すると良い結果を生むでしょう。
バイアスとその回避方法
バイアスとは偏見や先入観のことで、この存在は面接の公正性や効果を低下させます。例えば、最初の印象だけで応募者を評価してしまう「初対面バイアス」や、自分と似た属性の応募者に対する好意的な評価「類似性バイアス」などがあります。これらは意識的にならずとも不意に働き、応募者の能力を的確に評価し難くします。
それでは、これらのバイアスを回避するにはどうしたら良いでしょうか。まず、バイアスの存在を認識し、その影響を理解することが重要です。次に、面接時の質問や評価基準を事前に明確に設定し、それを元に評価を行うことが有効です。具体的な評価基準があれば、バイアスに左右されずに応募者を評価することが可能となります。また、多様な視点を持つ複数の面接官で行うパネル面接も効果的な方法の一つです。
しかしバイアスを完全に排除することは難しいため、常に自己反省と意識改革が必要です。研修ではその心構えを強調しましょう。バイアスをなくす努力は面接官の公正な評価だけでなく、面接を通じて真の人材を獲得する企業全体の成長にも寄与する重要な取り組みと言えます。
面接官スキルの向上
面接官スキルの向上は、組織の人材開発戦略の中心的な要素であり、候補者の選定に大きな影響を及ぼします。面接官が固有のスキルと知識を持つことで、候補者からの情報を十分に引き出し、適切な選定を行います。これは人事部門だけでなく、共同面接や部署面接を行う全ての担当者にとって重要です。具体的には以下のスキルが必要とされます。
・効果的な質問技術
・応募者のモチベーションの理解
・判断と評価の基準
・面接後のフォローアップ
これらのスキルは、継続的な研修と実践を通じて、どんな面接官でも向上させることが可能です。適切な訓練を受けることで、面接官は自信を持って面接を進行し、組織の人材開発戦略の一部として、有能な候補者を見つける能力を強化します。
1つずつ見ていきましょう。
効果的な質問技術
効果的な質問技術を身につけることは、面接官が求職者のスキルや適性を明確に理解するための重要な手段です。以下のような技術があります。
・答えやすい質問を用意することで、応募者自身の言葉で能力や経験を説明させる
・特定の能力や経験について深堀りするためのフォローアップの質問をする
・応募者の反応を見て柔軟に対応するスキル
研修では、適切な質問をするために準備するスキルと、面接中に瞬発力を利かせる対応力とを鍛える必要があります。
応募者のモチベーションの理解
応募者のモチベーション理解は、面接官としての重要なスキルの一つです。モチベーションが明確な候補者は、職場への適応性が高かったり業務への取り組みが真剣だったりすることが多く、この理解が採用の成果に直結します。
例えばよく取り組まれるアプローチの一つに、候補者の過去の経験や成果からモチベーションを引き出すことがあります。また、候補者の自己紹介や志望動機等から、その人が何に動機づけられ、何を達成したいと思っているのかを探る方法もあります。
そういったモチベーションの見抜き方を研修では学ばせる必要があります。
判断と評価の基準
面接官が判断や評価を行う際の基準を設定することは、公正で一貫性のある面接を実施するために不可欠です。評価基準を明確にすることで、すべての応募者が平等に評価され、適切な人材が採用される確率を高めることが可能となります。
評価基準の設定では、まず応募者が持っているべき能力やスキル、経験、知識をリスト化します。これが必要な最低限の資格や要件です。このリストは、面接の質問を作成する際の基礎となるほか、評価の基準としても使用されます。
次に上記のリストを基に、求められる職務に必要な各種スキルを評価項目に設定します。具体例としては、技術的スキル、コミュニケーションスキル、リーダーシップ、問題解決能力などです。さらにそれぞれの評価項目に対して評価尺度を設定し、一貫性のある評価を可能にします。これにより、いずれの面接官によっても同じ評価基準が適用されます。
さらに、この評価基準は面接後のフィードバック提供の際にも役立ちます。面接者がどの部分で優れていたのか、どのスキルが改善が必要なのかを具体的に伝えることが可能となります。これは応募者にとって貴重なフィードバックとなり、また企業にとっても再応募を促す効果があります。
面接後のフォローアップ
面接終了後のフォローアップには、応募者に対するフィードバックの提供のほか自身の評価・決定過程の見直しを含みます。
まず、応募者にフィードバックすることで自己改善の機会を持つことを可能にします。一方、面接官の自己評価を通じて、自分がどの部分で偏見が生じた可能性があるのか、または改善の余地があるのかを理解できます。
これらのフォローアップ活動は、面接官のスキル向上および組織全体の採用効率を高めるために不可欠な要素となります。当然研修でも必須の内容です。
面接官研修の実践トレーニングとフィードバック
最後に、面接官研修の実践トレーニングとフィードバックについてまとめます。以下の点について解説します。
・模擬面接の実施
・実践的なケーススタディ
・個別フィードバックと改善点
・継続的な研修の重要性
上記の施策により、それぞれの面接官固有のバイアスを矯正したり少なくとも自覚したりできるようになります。順に見ていきましょう。
模擬面接の実施
模擬面接では実際の面接と同じ状況を再現することで、応対力や質問への答え方など実践的なスキルを身につけることが可能です。想定外の反応への対応など瞬発力を鍛えることができます。
実践的なケーススタディ
ケーススタディとして具体的なシチュエーションを設定し、その中での適切な行動や対応を考えることで、対面している人の態度や言葉から意図や能力を見抜く力が養われます。また難解な問題を取り扱うこともあり、その場合は面接官としての洞察力を深めます。
個別フィードバックと改善点
フィードバックは、自分の弱点を知り、自己改善を促すための重要な手段です。これにより次回の同様のシチュエーションに対する対応力が増し、面接官としてのスキルアップにつながります。また、このフィードバックは個々の求めるスキルレベルやニーズに合わせられるため、必要な改善点を把握しやすいという利点もあります。
継続的な研修の重要性
スキルを習得し、それを維持向上させていくには繰り返しの訓練と学びが不可欠となります。特に面接官研修では、これまでの経験や知識だけではなく、新たな情報やトレンドを掴むためにも、継続的な学びが求められます。研修は一過性のものではなく、継続的に行うことで個々のスキル向上だけでなく組織全体のレベルアップにも貢献します。
面接官研修なら東京ITスクールへ
面接にも役立つスキルの習得を目指すなら、東京ITスクールにお任せください。質問力、傾聴力、コミュニケーション能力、キャリアプラン、対人関係構築など面接官としての資質に直結する講座を多数ご用意しています。もちろん面接だけでなく日常的なビジネスの場面でも役立つスキルです。
ご興味やご質問などおありでしたら、お気軽にお問い合わせください。
IT人材の採用から育成まで!集合研修もオンライン研修も、社員教育なら東京ITスクールへ
東京ITスクールは、IT人材の採用から育成までを包括的に支援する法人向け人材育成・紹介サービスです。
システム開発事業に長年携わってきた私たちならではの、現場で即戦力として活躍できる確かなプログラムをご提供します。
- IT人材の採用から育成までをトータルで支援
- 新人~管理職まで、階層別の学びをご用意
- 実践豊富なカリキュラムで現場即戦力を育成
関連記事
講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。