研修の効果測定の成果を高めるには?実践的な手法や課題への対策
公開日:2024年03⽉26⽇最終更新日:2024年03⽉26⽇
研修も、ほかの企業活動と同様にPDCAが大切です。その流れの中で、効果測定を行うことが改善・向上のために求められます。しかしやりっぱなしで終わってしまっているケースも多いのではないでしょうか。
この記事では、研修の効果測定について詳しく解説しています。この記事を読むことで、主に以下の点を理解できるようになります。
・研修で効果測定を行う目的
・研修の効果測定の種類と方法
・実践的な効果測定手法
・効果測定の分析と解釈
・効果測定における課題と対策
効果測定を行う際に理解しておくべきことを解説しています。企業の研修担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
研修の効果測定とは
研修の効果測定とは、企業が社員教育の一環として行う研修の成果を数値や指標で把握するための手段です。これにより、研修に投資した時間や費用が有意義に使われているか、研修の内容が社員のスキルアップや知識の習得に寄与しているかを評価できます。
特に企業が研修の効果測定を行う主な理由は、研修の質と効果を高め、より効率的な人材育成を達成するためです。適切な方法で効果測定を行い、そのデータを適切に解釈し、適切に反映することが求められます。
毎回の研修ごとに効果測定を行うことで、研修計画の改善に活かしたり、次回の研修内容の設定や方向性の決定に役立てることが可能となります。
研修の目的と効果測定の関係
研修の目的と効果測定の関係は、研修の成功を定義する基盤です。研修の目的によって、具体的な学習結果や行動の変化が決まります。一方、効果測定は、目的を具体化した目標が達成されたかどうかを評価するものです。
例を挙げて考えてみましょう。営業スキル向上を目指す研修の場合、目的は「新規顧客獲得のスキルを向上させる」かもしれません。そこで効果測定では、例えば「研修後の3ヶ月間で新規顧客獲得数が増加したか」を評価します。
このように、研修の目的と効果測定は密接に関連しており、目的が明確でなければ効果測定も有意義に行えません。
効果測定の種類と方法
効果測定の種類は大きく分けて二つあります。
「形成評価」…研修や教育が進行中に行う。学び手の理解度やスキルの進捗状況を把握することが目的
「成果評価」…研修や教育が終了した後に行う。学び手が獲得した知識やスキルをどの程度活用できているかを測ることが目的
方法としては、形成評価ではテストやクイズ、演習といった手法があり、成果評価では職場でのパフォーマンスや事業成果の変化を元に評価する方法が一般的です。
効果測定のタイミング
研修の効果測定のタイミングは、研修の前、研修中、研修後の3つに分けられます。
・研修前の効果測定…参加者の知識やスキルの現状を把握し、研修の中身を最適化する
・研修中の効果測定…研修の進行状況をチェックし、必要に応じて調整を行う
・研修後の効果測定…研修の成果を確認し、今後の改善点を見つける
これらの各タイミングで効果測定を行うことで、研修のクオリティを徹底的に確保することができます。また、これらのタイミングを逃さないよう、明確なスケジュールを設定することも重要です。
実践的な効果測定手法
実践的な効果測定手法を知ることは、研修が目的を達成しているか、また参加者が学んだ知識を実際に活用できているかを確認するために必要です。具体的な手法としては、以下の方法が考えられます。
・実地試験とピロットテスト
・アンケートによる効果測定
・実務でのパフォーマンス測定
・シミュレーションとケーススタディ
それぞれについて解説します。
実地試験とピロットテスト
実地試験は、研修の内容が実際の業務に対してどれだけの効果があるかを確認するために行います。参加者が研修で得た知識や技術を、現場でどの程度活用できているかを評価し、強化や改善が必要な部分を把握します。
一方、ピロットテストは研修プログラムの試験運用を行うもので、これにより研修の内容や運用方法に問題がないかを事前に確認します。具体的には、教材の理解度、教育方法の適切性、時間配分の妥当性などを検証します。
これらの試験を行うことで、研修の有効性を高めるとともに、参加者に最大限の効果を提供することが可能となります。
アンケートによる効果測定
アンケートによる効果測定は、参加者の意見を直接聞く点で非常に有効な手法と言えます。アンケートの形式は自由回答によるオープンエンド形式や選択肢によるクローズドエンド形式等があり、それぞれ使用する場面や目的に合わせて選びます。
ただしアンケートは回答者の主観に大きく依存するため、その結果をそのまま効果測定の結果とするのは適切ではありません。
実務でのパフォーマンス測定
実務でのパフォーマンス測定は、研修参加者が学んだ知識や技術をどの程度活用しているかを評価する方法です。例えば、研修後の成果物の品質改善や業務効率の向上など、直接的なパフォーマンスの変化を測定します。また、一部の企業では、月次の業績やクォータ達成率など、間接的なパフォーマンス指標を使用しています。
ただし、他の要素もパフォーマンスに影響を与えるため、研修だけの効果を正確に把握するには工夫が必要です。例えば、研修が業務パフォーマンスにどの程度影響を与えたかを探るためには、研修前後でのパフォーマンス変化を比較すると良いでしょう。
シミュレーションとケーススタディ
シミュレーションは、実際の業務状況を模倣したシナリオで参加者がその対応を試す方法で、その参加者の知識やスキルを直接試すことができます。例えば、システム開発の研修では、仮想のプロジェクトを通じて実際の開発作業を体験します。
一方ケーススタディは、実際のビジネスシーンを具体的な事例として提示し、その解決策を探る方法です。これにより、参加者の分析力や問題解決力を測ることができます。例えば、ある企業でのマーケティング課題を事例に、どのようなアプローチが最適かを考えるといった方法です。
いずれも単なる知識の有無だけでなく、実践における利用能力を評価するのに適しています。実際の業務に近い形で能力を試すことができるため、研修効果の現場での具体的な反映を測るのに有用と言えます。
効果測定の分析と解釈
効果測定の分析と解釈を行うと、研修の成果を正確に評価し、研修計画の改善に役立てることができます。ここでは以下の4つの面に分けて解説します。
・データの収集と整理
・統計解析の基礎
・効果測定結果の解釈
・成果の共有とフィードバック
順に見ていきましょう。
データの収集と整理
データの収集と整理は効果測定の基礎となる工程です。初めに、研修前後のパフォーマンスデータ、参加者のフィードバック、目標達成度など、関連する全てのデータを収集します。この段階で、データの質と量を確保することが重要です。
次に、得られたデータを整理し、解析可能な形にします。例えば、アンケート結果を数値化したり、フリーテキストの意見をカテゴリー分けしたりします。この作業は比較・関連付けを容易にし、より深い洞察を得るために必要です。
データの収集と整理により、研修の効果を具体的に把握するとともに、今後の改善方針を立てる一助となります。
統計解析の基礎
統計解析の基礎は、任意の研修プログラムの効果測定に欠かせない要素です。
まずは、得られたデータがどのような形状の分布をしているのかを理解することから始めます。これには、平均、中央値、モードなどの「中心傾向」、範囲、四分位範囲、標準偏差などの「散らばりの度合い」を用い、データの要約を行います。
次に、因果関係や相関関係を探るために、回帰分析や相関分析などの方法を利用します。これらの統計手法を理解し正しく適用することで、客観的で信頼性の高い効果測定が可能となります。
効果測定結果の解釈
効果測定結果の解釈は、その効果が適切に発揮されているかを判断する重要なステップです。ここでは、あくまで客観的なデータに基づき、研修の効果を正確に評価する方法を提供します。
まず、効果測定結果のデータを理解するには、その数値が何を示しているのか、そしてその背後にある意味を理解することが重要となります。例えば、「参加者の90%が研修に満足した」というデータがあったとき、それは研修が全体的に良く行われていたと言えますが、その一方で満足しなかった10%の理由も探るべきです。
また、データの解釈には偏りやエラーが生じないように注意を要します。データを誤解釈すれば、その結果に基づく意思決定も誤ったものとなります。一見良好に思える結果も、深堀りしてみると問題点が見つかることもあります。例えば、「新入社員の退職率が2%下がった」という数字があったとしても、それが一時的な変動なのか、研修が原因であるのかを確認する必要があります。
最後に、効果測定結果は単に数値として見るのではなく、具体的な改善策につなげるべきです。データに基づいた改善策を立てそれを実践することで、研修の質をより一層向上させることが可能となります。
成果の共有とフィードバック
効果測定の結果を共有しフィードバックを取ることは、全体の成果を向上させる重要なプロセスです。成果の共有は、全員が同じ方向に進むための一体感を生み出します。具体的には、共有会を設けたり、レポートとしてまとめたりします。
一方、フィードバックは改善の源泉と言えます。参加者から直接アンケートを取るだけでなく、スーパーバイザーや他の関係者からも意見を取り入れ、改善点を洗い出します。これらを分析し、次回の研修プラン作成に生かすことで、研修の質は徐々に向上します。
効果測定における課題と対策
効果測定には、多くの課題と対策が存在します。ここでは以下の3点について解説します。
・測定結果のバイアスとエラー
・意見集約の難しさ
・効果測定の長期的な追跡
具体的に見ていきます。
測定結果のバイアスとエラー
効果測定の結果は、さまざまな要因によりバイアスが生じたりエラーが混入したりする可能性があります。例えば、参加者が自己評価を過大に報告する傾向にあるいわゆる「レスポンスバイアス」は、アンケート調査における一般的な問題で結果に影響を与えます。また効果測定の方法が不適切であると、結果に誤差をもたらす可能性があります。
これらの問題を克服するためには、客観的で信頼性の高い測定ツールの使用、測定の透明性を確保し誤解を防ぐための明確な指示などが必要です。モニタリングやレビューのプロセスを定期的に行い、必要に応じて改善することも重要です。
意見集約の難しさ
効果測定の一部として、研修参加者からのフィードバックや意見を集約する作業があります。しかしこれらの意見は主観的であるため、その集約には注意が必要です。参加者全員の意見を平等に反映させるためには、匿名性の確保や集約方法の透明性などが求められます。
また、意見の偏りを防ぐためには、研修終了後すぐのフィードバックだけでなく、定期的なアンケート実施も有効です。それにより、研修の長期的な効果や改善点をより正確に把握することが可能になります。
効果測定の長期的な追跡
効果測定の長期的な追跡とは、研修後の成果を定期的に評価していくことです。これにより、スキルの定着度や仕事への応用度を把握し研修の価値を確認することが可能になります。また長期追跡は個々の成果だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
しかし長期的な追跡はコストや時間がかかるため、その実施は容易ではありません。この課題を解決するためには、効果測定を組織の経営戦略に組み込むことが重要です。経営層の理解と協力がなければ、効果測定の長期追跡は成功しません。そのため研修の成果を具体的なビジネス成果に結びつけられるような指標を設定し、それを経営層に報告することが求められます。
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講師としての登壇・研修運営の両面で社員教育の現場で15年以上携わる。
企業のスタートアップにおける教育プログラムの企画・実施を専門とし、
特にリーダーシップ育成、コミュニケーションスキルの向上に力を入れている。
趣味は筋トレと映画鑑賞。