コーチングとは?ティーチングとの違いや導入方法を解説
公開日:2023年10⽉09⽇最終更新日:2023年10⽉09⽇
かつて、人材育成というと先輩が後輩に、自分持つ仕事の経験やスキルを伝える・教える「ティーチング」が主でしたが、近年それが変わりつつあります。
ティーチングに代わって導入されることが増えているのが「コーチング」です。
「コーチングとティーチングは違う」と言われていますが、ほとんどの人はその違いをはっきり理解していないでしょう。
この記事で、コーチングの概要やティーチングとの違いのほか、導入方法や実施する際の注意点などを解説しますので、人材育成に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
コーチングとは?
まずコーチングの概要を解説します。
コーチングというと、スポーツのコーチのように指導するというイメージを持つ人もいるでしょう。
しかし、それらのほとんどは「ティーチング」であり、コーチングとはまったく性質が異なります。
コーチングとティーチング・カウンセリングとの違いも解説します。
コーチングとは
コーチングとは、一般社団法人 日本コーチ連盟によると「答えを創り出すサポートをすること」とされています。
わかりやすく言い換えれば、「答えは自分の中にある」というスタンスのもと、物事の正解を伝えるのではなく「答えに辿り着けるよう導く」のがコーチングです。
コーチングでは、次のことを非常に重視します。
- コーチングを受ける人が自ら考えること
- 行動を通じて学ぶこと
これを実現するため、指導する側の人間は指導される側が本来持っている力や可能性を最大限発揮できるようサポートします。その際に必要なコミュニケーションテクニックが「コーチング」なのです。
コーチングは、次の考え方を前提に実施されます。
- 人間の可能性は無限
- 課題に対する答えは相手の中に必ずある
- 相手が自ら答えを見つけるためのパートナーに徹する
この3つの考え方を前提にしたコミュニケーションを心がけることで、コーチングを受ける側は
- 相手が自ら答えを導き出す能力
- 自主的・主体的に物事に取り組む姿勢
- 新しい価値観や答えを見つけようとする前向きな姿勢
を身につけられるとされています。
ティーチングやカウンセリングとの違い
コーチングと混同されやすいのが、ティーチングとカウンセリングです。
この3つには次のような違いがあります。
| コミュニケーションの取り方 | 重視すること |
コーチング | 対等な立場で、相手が答えに辿り着くためのサポートをする(伴走型) | 問いかけることを重視する |
ティーチング | 上の立場から相手に自分の知識や経験を教える(指導・命令型) | 伝えることを重視する |
カウンセリング | 対等な立場で相手の気持ちに理解や共感を示す(共感型) | 話を聞くことを重視する |
ティーチングは、知識や技術を持っている人が、その知識や技術を相手に伝達しながら目標に向かって導くことを指します。スポーツにおけるコーチからの指導などは、実際のところコーチングではなくティーチングです。
ティーチングでは、自分の知識や経験を相手に伝えることを重視します。そのため、指導役には豊かな経験と知識が必要不可欠です。
カウンセリングは、気持ちの改善をサポートするテクニックです。カウンセリングでは相手の話に対する理解・共感を示し、相手の話を聞くことを重視します。
一方、コーチングでは、経験・知識の豊富さよりも、相手の話を聞いたうえで適切なタイミングで適切な問いを投げかけることを重視します。
相手の話をよく聞くという点はカウンセリングと共通しますが、コーチングでは気持ちの改善を目的とせず、その人が自分なりの答えを出すことを目的としてサポートを行う点が異なります。
ビジネスにコーチングを取り入れるメリット・デメリット
ここからは、ビジネスにコーチングを取り入れるメリット・デメリットを解説します。
次世代の人材育成方法として注目を集めているコーチングですが、メリットもあればデメリットもあります。導入する際は、メリット・デメリットを把握したうえで導入することが重要です。
取り入れるメリット
コーチングを取り入れるメリットは、主に次のとおりです。
- 人材育成がスムーズに進む
- 従業員同士のコミュニケーションが活発になる
- 組織の成長につながる
コーチングには密なコミュニケーションが欠かせません。先輩や上司が後輩や部下と密なコミュニケーションを取ると、互いに対する信頼感が生まれます。
結果として職場での意思疎通がしやすくなるため、従業員同士のコミュニケーションが活発になることが期待できるでしょう。
従業員同士のコミュニケーションが活発になれば、人材育成もスムーズに進みます。
新入社員に対してコーチングを行い、成長につながる質問やアドバイスを繰り返してコーチングが組織に浸透すれば、組織の成長にもつながります。
取り入れるデメリット
一方、コーチングにはデメリットもあります。コーチングを導入する際は、次のことも頭に入れておきましょう。
- 効果が出るまでに時間がかかる
- 担当者によって得られる成果が変わる
- そもそもコーチングが向かない業務やシチュエーションもある
コーチングは、相手と対等な立場でコミュニケーションを取りながら、問いかけやアドバイスを通じて、気付きや学びのサポートをします。そのため、効果が出るまでそれなりの時間が必要です。
また、担当者によっても得られる成果が変わります。指導役が十分なコーチングスキルを持っていないと、思うような成果が得られず、時間だけが無駄に過ぎていくことになりかねません。
コーチングで人材育成をする際は、ある程度長い目線で見て、途中で目的を見失わないよう折につけ確認しながら、進めましょう。
コーチングがうまくいかない場合は、その業務がコーチングに適している業務かどうか確認することも重要です。繰り返し行う単純作業などは、コーチングよりもティーチングでやり方を教えたほうが効率的です。
業務に必要な基本的なスキルや知識を学ぶ場合や、新人研修のように一度に大人数の指導を行う場合も、コーチングよりティーチングの方が適しています。
コーチに必要な3つのスキル
ここからはコーチングを行う側、コーチに求められる3つのスキルを解説します。
適切なコーチングで相手の能力を引き出すためには、手順も重要ですが、コーチのスキルも重要です。
仮に今これらのスキルが未熟であっても、トレーニングで伸ばすことができます。
自分自身のスキルレベルと照らし合わせてチェックしてみましょう。
相手の話を聞くスキル
コーチに求められる最も大切なスキルが「相手の話を聞くスキル(傾聴)」です。
ただ相手の言っていることを聞いて理解するだけでなく、声のトーンや仕草、目線などにも気を配り、相手の話をそのまま素直に受け入れることが重要です。
人というのは、他人の話を聞いているとつい質問や感想、反論を挟みたくなります。しかし、それはコーチングでは望ましいといえません。
相手の話を聞いて「そうなんだな」と聞いたままを受け入れ、相手の気持ちに共感することがコーチングの第一歩です。
相手は、自分の話をきちんと聞いてもらうことで、次のことができるようになります。
- 自分自身や自身の考えへの理解が深められる
- 自主的・積極的・建設的な言動がとれるようになる
- 人に心を開いて安心してコミュニケーションがとれるようになる
- コーチとの信頼関係が築ける
適切なタイミングで問いかけるスキル
コーチングでは、その人の中にある答えに辿り着くサポートをするため、適切なタイミングで適切な問いを投げかけることがとても重要とされています。
教える側・教えられる側双方の成長につながる気付きが得られる問いを投げかけるスキルを身につけることが重要です。
たとえば、会議資料の作成ができていない部下に対して「明日の会議の資料はできていますか?」など単に進捗を確認する問いを投げかけても、相手に気付きや成長がもたらされることはありません。
だからといって「なぜ資料を作っていないのですか?」という問いも無意味です。この問いは、問いかけのように見えて、実際のところ相手に対する非難でしかありません。相手から言い訳を引き出すことはできても、成長につなげることは難しいですよね。
この時大切なのは、「あなたが会議資料を作成しなかった原因はどこにあると思いますか?」と問うことです。その人自身を責めずに、起こしてしまったミスにフォーカスを当てることで「次同じ失敗をしないようにするにはどうすればいいか」を考えさせます。
同じミスをしないようにするにはどうすれば良いか考え、自ら答えを導き出せば、再び同じ失敗はしにくくなるでしょう。
コーチングではこの「気付き」や「自ら答えを導き出すこと」を重視します。指導役はあくまでもそのサポートをするだけで、「こうしなさい」という明確な答えを与えることはありません。
褒めるスキル
聞くスキル・質問するスキルと同じように重要なのが、褒めるスキルです。人は誰でも褒められればモチベーションが上がります。
相手の長所を見つけて認め、相手にわかるように言葉や仕草で「私はあなたのこんなところがすごいと思っている」と伝えることは、相手のモチベーションを引き出すうえで非常に有効なテクニックとなるでしょう。
人は、他人から褒められた行動や言動は、繰り返し行いたくなります。
相手の長所を相手に伝わるように褒めることは、良い習慣を身につけさせるのにも効果的です。
褒める際は、次のことを意識しましょう。
- すぐに
- 具体的に
- 一貫性を持って
好ましい行動をあとから褒めても、相手の記憶・印象にはあまり残りません。
気付いたときにすぐに・何を評価したのか具体的に・自分の中の基準は変えずに一貫性を持って褒めると、相手に評価していることが伝わりやすくなります。
コーチングを導入する方法
ここからは、コーチングを導入する方法を紹介しましょう。コーチングを導入する流れは、次のとおりです。
いきなり現場に導入しようとすると失敗しやすくなるので、順を追って導入していきましょう。
ステップ1:具体的な目的を定める
コーチングを導入したいと思ったら、まずは具体的な目標を定め、それを社内で共有しましょう。
この際、次のことを意識してください。
- 目的は具体的にかみ砕いて考える
- コーチングの定義を共有する
目的を考える際は「リーダーシップを向上させる」といった大枠の目的ではなく、もう少し具体的なレベルにまで落とし込むことが重要です。
『部下のモチベーションを引き出す』
『部下の業績を上げる』
『部下と情報を共有しやすくする』
といった具体的な目標を設定することで、そのために何をすればいいかが見えてきます。
また、コーチングを行う際は定義も忘れずに共有しておきましょう。
適切なコーチングを行うには、関わる人全員がティーチングやカウンセリングとの違いや、コーチングの本質を理解している必要があります。この部分を疎かにすると、コーチングの質が低下してしまうので注意しましょう。
ステップ2:実施方法を決める
コーチングの目的や定義が共有できたら、社内でどのように実施するかを考えます。
職場でコーチングを実施する際は、主に次の3つの方法が用いられます。
ステップ2-1:管理職にプロのコーチをつける
管理職などのトップマネジメント層にプロのコーチをつけて、コーチングを実施する方法は、海外で広く行われています。これからは日本でもメジャーになっていくでしょう。
経営に関わる管理職層や経営層がプロのコーチによるコーチングを受けると、社内でコーチングのプロが育成しやすくなるというメリットがあります。
ステップ2-2:マネジメント層が資格を取得する
マネジメント層が専門のトレーニングを受け、認定資格を取得するのもよいでしょう。
資格取得にはそれなりに費用と時間がかかりますが、確かな知識とスキルに基づいたコーチングを実施できるようになります。
マネジメント層が資格を取得していれば、部下も安心してコーチングが受けられるでしょう。
ステップ2-3:研修・セミナーを実施する
プロのコーチによるセミナーや研修を受けるのもおすすめです。
資格取得レベルのスキルを身につける前に、とりあえずコーチングの基礎を身につけ、職場で実践してみたいという場合には最も取り組みやすいでしょう。
この時大切なのは、講師の質です。できるだけ経験豊富なプロのコーチにレクチャーしてもらえば、現場ですぐに使える活きたテクニックや知識が身につきます。
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コーチングを取り入れて次世代を担う人材を育成しよう
これからの時代を担える人材を育成するのは容易ではなく、従来のティーチングでは対応できない場面も増えてきています。
そこで積極的に導入したいのがコーチングです。
コーチングを導入すれば、自主的に考え、行動できる人材が育成できるようになります。
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現場SEとして活躍する傍ら、IT研修講師として多数のIT未経験人材の育成に貢献。
現在は中小企業を中心としたDX、リスキリングを支援。
メンターとして個々の特性に合わせたスキルアップもサポートしている。
趣味は温泉と神社仏閣巡り。