リーダーシップとは?押さえておきたい定義・スタイルと身につける方法を解説
公開日:2023年09⽉26⽇最終更新日:2023年09⽉26⽇
リーダーシップの意味や定義は様々ですが、一般的には「集団をゴールに導くための統率力」とされています。
リーダーシップは、リーダー志向の人だけが持つ素質であり、後から学んで身につけることはできないと思われがちです。しかし、ある程度のレベルまでなら、研修やセミナーで身につけられます。
なぜなら、リーダーシップは理論の上に成り立つテクニックであり役割だからです。生まれもったものではないので、理論を学んで実践すれば誰もが身につけられます。
この記事では、リーダー人材を育成するうえで押さえておきたいリーダーシップ理論とスタイルのほか、リーダーに求められる行動や身につける方法を解説します。
リーダーシップとは
リーダーシップは「統率力」と訳されることが多い言葉ですが、その意味や定義は様々です。まずは、リーダーシップの定義やマネジメントとの違いをみていきましょう。
リーダーシップとは
リーダーシップは、国語辞書では「指導者としての素質・能力。統率力」と説明されています。
しかし、ビジネス辞書ではもう少し踏み込んだ定義がされているなど、一概に「リーダーシップ=統率力」など単純に解釈することはできません。
一般的には「組織をまとめ、ゴールに向かって導いていく能力」と解釈されることが多いです。
ドラッカーが提唱するリーダーシップ
経営学者のピーター・ドラッカーは、リーダーシップを次のように定義・提唱しています。
“リーダーシップは資質ではなく仕事である。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である。
リーダーに関する唯一の定義は、つき従う者がいるということである。”
(出典:ドラッカー『現代の経営』『プロフェッショナルの条件』『未来企業』)
リーダーシップの有無や強さは生まれもった性格であると捉える人が多い中、ドラッカーは「リーダーシップとは仕事である」と定義しているのが大きな違いです。
ドラッカーは、リーダーに求められる行動も提唱しています。それが以下の5つです。
- 組織の目指すところやビジョンを明確にし、進む方向を決定する
- 相手の視点で物事を考えてコミュニケーションをとる
- メンバーひとり一人の力を引き出す
- 情報を収集し、全体にとってプラスとなる判断を下す
- メンバーが「この人についていきたい!」と思うような振る舞いをする
つまり、これらの行動を実践することが、リーダーシップでありリーダーの役割であると述べているのです。
リーダーシップとマネジメント能力の違い
リーダーシップとマネジメント能力は、混同されやすいものです。しかし、厳密には異なります。
リーダーシップは、目標の達成に向けて人を導く能力です。そのため、ビジョンを示して集団をそれに向けて導かなければならない経営者やリーダー、あるいはリーダー的な立場の人に強く求められます。
一方、マネジメント能力は目標を達成するにはどうすれば良いかを考え、その進捗(しんちょく)などを管理する能力です。そのため、担当部署を統括するマネージャーや部課長といった立場の人が身につけておくべきものとされています。
どちらも目標を達成するために必要な能力なので、立場によってはリーダーシップとマネジメント能力の両方が求められるケースもあります。
代表的な5つのリーダーシップ理論
ここからは、代表的なリーダーシップ理論をみていきましょう。
- PM理論
- 特性理論
- 行動理論
- 条件適合理論
- コンセプト理論
それぞれ解説します。
PM理論
PM理論は、1966年に社会学者の三隅二不二によって提唱された理論です。
PM理論では、リーダーシップは「課題関連機能(Performance function:P機能)」と「対人関連機能(Maintenance function:M機能)」からなると考えられており、全部で4通りのタイプ(PM型・Pm型・pM型・pm型)があるとしています。
P機能は成績・生産性を向上させるための能力で、指導力や進行管理能力、計画立案力などを指します。一方、M機能はモチベーションを引き出す力やコミュニケーション力など、メンバーのメンタルをサポートする力です。
優れたリーダーは、P機能もM機能も備えている「PM型」とされています。
特性理論
特性理論は、リーダーシップの最も古典的な理論で、優れたリーダーの体つきや性格、行動の特徴などを研究したものです。
「リーダーは生まれながらのリーダーであり、作られるものではない」という立場を取るのが、特性理論の特徴です。
長くリーダーシップ理論の主流であり続けており、プラトンの「国家論」やマキャベリの「君主論」にも記述があります。
行動理論
行動理論は、優れたリーダーに共通する行動を研究し、その行動の結果リーダーシップが発揮されるとする考え方です。
行動理論では、主に2つの軸でリーダーを分類してその特徴を分析し、優れたリーダー像を定義していきます。
シンプルで理解しやすい理論で、実用性・汎用性に優れています。その一方、人物の能力にだけ焦点を当てているため、チームの規模や雰囲気、状況やシーンといった条件がまったく加味されておらず、リーダーの適応能力について説明できないという欠点があります。
条件適合理論
行動理論を発展させる形で1960年代から提唱されるようになったのが「条件適合理論」です。条件適合理論では、業務への関心度と人への関心度に加え、リーダーを取り巻く環境まで考慮して、リーダーシップを考えます。
条件適合理論では、業務と人どちらへの関心も高く、部下の能力や環境に合わせて行動を変えていけるリーダーが優秀なリーダーであるされています。
コンセプト理論
条件適合理論を発展させた「コンセプト理論」は、「シチュエーション別にどのようなリーダーシップを発揮するか・具体的にどのように解決するか」を議論するために提唱されました。議論を目的としているため、コンセプト理論における正解はあってないようなものです。
コンセプト理論においてリーダーシップには5つの型があり、それぞれ適しているシチュエーションが異なります。
この5つの型を理解して、適切なシーンで適切なリーダーシップを発揮することが、優秀なリーダーの役割とされています。
5つのリーダーシップスタイル
ここからは、前述のコンセプト理論で提唱されている5種類のリーダーシップをみていきましょう。
- ビジョン型
- コーチ型
- 親和型
- ペースセッター型
- 変革型
それぞれ解説します。
ビジョン型
ビジョン型は、リーダーが考える理想やビジョンをメンバーと共有して、メンバーのやる気を引き出すリーダーシップです。
新しいアイデアや行動の変化によって信頼が生まれ、組織の結束力が高まりやすくなります。
このタイプのリーダーシップを発揮するには、目標設定能力が非常に重要です。企業の経営方針と組織目標を結び付け、具体的な数字で目標を示すことが成果が出せるかどうかを左右すると言われています。
コーチ型
コーチ型は、メンバーの能力や特性を見極め、スキルアップを支援するリーダーシップです。「君にはこれぐらい期待している」と明確な期待値を示すことで、メンバーのやる気を引き出します。
コーチ型のリーダーシップを発揮する際に重要になるのが、メンバーを適切に評価し、その能力を的確に把握する「アセスメント能力」です。
メンバーのやる気を引き出し、自律的に動いてもらうには、コミュニケーション能力も欠かせません。
親和型
親和型は、メンバーと感情的なつながりを作って、友達のように接しながらチームを目標に導くリーダーシップです。
組織内の友好関係・信頼関係が成果に大きくかかわってくるため、リーダーには高いコミュニケーション能力が求められます。
ペースセッター型
リーダー自身がメンバーの手本となるような高い成果を出すことで、メンバーを鼓舞して組織を導いていくのがペースセッター型のリーダーシップです。
パフォーマンスを重視して、短期間で成果を出すのに有効とされています。
ペースセッター型のリーダーシップを発揮するうえで重要なのが、目標設定能力や主体性、当事者意識です。リーダーが自ら進んで物事に取り組む姿を示すことは、メンバーの主体性・当事者意識向上にも効果があります。
変革型
変革型は、リーダーが自分からどんどん新しいことにチャレンジしていくことで、チームのモチベーションを上げるリーダーシップです。
コーチ型のリーダーシップと似ていますが、より高い目標を設定したり、メンバーのやる気を引き出したりしたいときに適しているとされています。
リーダーシップを高めるための行動指針
ここからは、リーダーシップを高めるための行動指針を紹介しましょう。リーダーシップを高めたいと考えている人は、普段の生活で次のことを意識してみてください。
謙虚に周りの意見に耳を傾ける
優れたリーダーシップがある人は、人の意見を聞く力も持ち合わせています。
自分の意見を押し付けたり、メンバーの意見を尊重することなく強引に物事を決めたりするリーダーは、信頼されません。
特に最近は多様性が重視されていることもあり、周りの意見に耳を傾けるだけでなく、それを業務や職場環境改善に反映させられるリーダーが求められています。
誰に対しても誠実に対応する
誰に対しても誠実に対応することもリーダーに求められることです。人によって態度を変えたり、不誠実な対応をしたりしていては、優れたリーダーにはなれません。
組織を成功に導くには、メンバーに分け隔てなく接し、それぞれを思いやることが欠かせません。
人をぞんざいに扱ったり、見下した態度を取ったりすることがないようにしましょう。
適切な距離感を持ちながら対人関係を築く
誰とでも身内のように仲良くなれるからといって、優れたリーダーになれるとは限りません。組織を率いるためには、メンバーと適切な距離を保つことも重要です。
特定のメンバーとだけ親しい、あるいは特定のメンバーとだけコミュニケーションを取らないのでは、チームの結束力は高まりません。
結束力を高め、目標を達成するためにも、相手と適切な距離を保ちながら信頼を築くよう努めましょう。
周囲の感情に対して気を配る
状況を把握したり、空気を読んだりする力も優れたリーダーには必要です。落ち込んでいるメンバーがいたら励ましたり、ストレスを抱えているメンバーがいたら負担を軽くしたりするなど、組織の状況に合わせた気配りを行いましょう。
問題が表面化する前に対処するには、普段から周囲の状況把握や空気感の変化に気を配っておくことが重要です。
相手の立場に寄り添う
メンバーとコミュニケーションを取るときは、相手の立場に寄り添うことから始めましょう。自分の意見を主張する・相手の意見を否定するだけでは、コミュニケーションは成立しません。
まずは相手への共感を示し、その考えを理解しようと努めてください。
誰でも、自分を尊重してくれない相手には付いていきたくないものです。自分を認めてほしければ、相手を認める・受け入れることから始めましょう。
成果だけでなくプロセスにも目を向ける
優秀なリーダーほど、成果だけでなくプロセスにも目を向けます。目標を達成することは大切ですが、達成できなかったとしてもその原因を分析し、次に生かしましょう。
努力したこと・メンバーががんばっていたことにも目を向け、それを評価すれば、メンバーからの信頼も得やすくなります。
課題やトラブルから目を背けない
時にリーダーは、重要な判断・決断を迫られることもあります。その責任を取るのもリーダーの役割です。
目標に向かって進んでいく間に、課題やトラブルにぶつかることもあるでしょう。課題やトラブルに直面したら、逃げずに責任感を持って解決に臨んでください。
リーダーシップを身につける方法
積極的にリーダーシップを身につけるには、次の方法がおすすめです。
リーダーシップ勉強会に参加する
リーダーシップといっても、前述のように様々なタイプがあります。もちろん、組織ごとに求められるリーダーシップも異なります。
より積極的にリーダーシップを身につけたいなら、リーダーシップ勉強会に参加してみましょう。
勉強会でリーダーシップについて深く学ぶことで、より自分の組織にフィットするリーダー像が見えてきます。
リーダーシップ研修を実施する
勉強会を開催するにも人がいない、身近で勉強会が開催されていない場合は、研修プログラムを実施するのがおすすめです。研修では、より実践的なリーダーシップが学べます。
リーダーシップ研修を受講する際は、講師の質にこだわることが重要です。できるだけ経験豊富な講師に研修を依頼しましょう。
研修後は別途演習の機会を設けるなどして、研修で学んだリーダーシップを定着させる仕組みを作ることも重要です。
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かつてリーダーシップは「その人が生まれもった特性であり、後から身につくものではない」とされていました。しかし、ドラッカーが定義するように「リーダーシップ=仕事」であるなら、あとから学び身につけることが可能です。
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現場SEとして活躍する傍ら、IT研修講師として多数のIT未経験人材の育成に貢献。
現在は中小企業を中心としたDX、リスキリングを支援。
メンターとして個々の特性に合わせたスキルアップもサポートしている。
趣味は温泉と神社仏閣巡り。