要件定義とは?初心者ITエンジニアが押さえておきたいプロセスとポイント
公開日:2023年10⽉30⽇最終更新日:2025年02⽉20⽇

ソフトウェア開発において、プロジェクトの成功や失敗は初期段階の要件定義に大いに依存します。しかし、難しいと感じるエンジニアも少なくありません。
この記事では、その問題を解決するために、基本的な進め方や注意すべきポイントについて、わかりやすく解説します。
記事を読んで得られることは以下の通りです。
①要件定義の基本的な進め方とその例
②要件定義書に盛り込むべき基本的な項目の知識
③成功させるためのポイント
本記事を読み終わると、初心者であっても自信を持って要件定義に取り組むことができ、ITエンジニアとしてのスキルが飛躍的に向上するでしょう。
要件定義とは
要件定義とは、システム開発における事前準備の一部で、具体的にどのような機能やサービスを提供するシステムを開発するのか、その要素を明確化する作業のことを指します。
システム開発の全体像を見つつ、細部に渡り詳細な仕様を組み立てていく作業なので、プロジェクト全体の進め方に影響を与える非常に重要なステップです。このプロセスを適切に行うことで、開発の流れがスムーズになり、必要な機能が確実に実装されるようになります。
さらに、要件定義を念入りに行うことで後のテスト工程もスムーズに進行し、品質の高いシステムを迅速に開発することが可能となります。
要求定義との違い
要件定義と要求定義は、しばしば混同される概念ですが、それぞれ目的とするところに違いがあります。要求定義は、システムを利用するユーザーからの「これが欲しい」という願望やニーズを明確化するプロセスを指します。
一方、要件定義では、これらの「願望やニーズ」を「どのようにシステムに組み込んでいくか」を具体的に定義しましょう。「要件定義」は「要求定義」が抽象的なニーズの洗い出しなら、要件定義はそれを実現するための具体的な手法やアプローチを設計する工程といえるでしょう。
つまり、要求定義が「何が」必要かを定め、要件定義が「どのように」それを実現するかを定めると理解すると分かりやすいです。
基本設計との違い
要件定義と基本設計は、システム開発プロセスの重要なステップであり、それぞれ異なる目的と役割を持っています。要件定義は、システムが達成すべき目的とそのために必要な機能を明確にする段階です。
一方、基本設計は、要件定義で設けられた機能を実現するための詳細な設計を作る段階です。要件定義が「何をするか」を決めるのに対して、基本設計は「どのようにそれを実現するか」を決定します。
そのため、要件定義がしっかりと行われていないと、基本設計を進めることが難しいと言えます。逆に言えば、要件定義が明確であれば、基本設計もスムーズに進むでしょう。
要件定義書完成までの進め方
要件定義書を完成させるまでのプロセスには、大きく分けて3つのステップがあります。まずは、ユーザーからのヒアリングをもとに要求を定義します。ユーザーが求めている機能や課題を詳細に把握し、実際にシステム開発に反映する要件を定義するのです。この段階では、ユーザーの声を直接聞くヒアリングが重要となります。
次に、実装する機能を検討します。要件定義で把握したユーザーの要求を元に、システムにどのような機能が必要か、それぞれの機能にはどのような仕様が適しているかを考えます。また、開発の費用や日程、品質なども考慮に入れつつ、最も適切な機能設計を行うのです。
最後に、要件定義書を作成します。ここでは既に明らかになった要求や機能設計をまとめ、システムの開発目的や概要、機能要件や非機能要件などを詳細に記述します。
この要件定義書が、システム開発の「設計図」の役割を果たし、開発チーム全体で共有され、開発の進行をプロジェクトリーダーが管理するための重要な資料となります。
ユーザーからのヒアリングをもとに要求を定義する
ヒアリングは要件定義の最初の一歩とも言えます。ユーザーから直接要求を収集することで、システム開発の目的や必要な機能を明確にすることができます。具体的には、ユーザーの現在の業務フローや困っている点、解決したい課題などを詳しく調査します。
この際、話し言葉だけでなく、ユーザーの態度や表情からも情報を読み取ることが重要です。また、ユーザーが自分の要求を明確に伝えにくい場合もあるため、エンジニアが積極的に質問を挟んで情報を引き出すスキルも求められます。
システム、ソフトウェアに実装する機能を検討する
要件定義の進め方として次に重要なステップが「実装する機能を検討する」です。システムを設計する上で、どの機能が必要か明確にすることは必須です。具体的な例としては、WEBサービスならログイン機能や検索機能、データベース管理ならデータの追加や削除などが考えられます。
ただし、必要な機能を列挙するだけではなく、それぞれの機能がシステム全体の中でどのように働くのか、どのような流れで動くのかも視覚的に理解できるような設計を心掛けましょう。この段階で深く考えることが後の開発工程をスムーズに進めます。
要件定義書を作成する
要件定義書を作成する際は、その設計工程と提案内容を明確に表現することが重要です。まず、概要や目的、背景などの基本情報から始めます。次に、システムの機能要件を具体的に列挙し、それがどのようにユーザーの要求を満たすかを記述します。
また、ソフトウェアの品質に影響を与える非機能要件もまとめておきましょう。具体的な設計や実装の詳細は基本設計の段階で行いますが、ここではそれぞれの要件がどのような業務プロセスに関連するのかを理解しておくことが大切です。
もちろん、予算やスケジュール、リスク管理などのプロジェクト管理に関する項目も忘れずに記載しましょう。要件定義書はプロジェクトの共通認識を作る重要な資料であり、その進め方や内容がプロジェクトの成否を左右します。
それぞれの項目を丁寧に洗い出し、わかりやすくまとめることで、プロジェクトのスムーズな進行を実現します。
要件定義書に最低限盛り込むべき項目
要件定義書を完成させるためには、最低限以下の項目を盛り込むべきです。まず「開発するシステムの概要」です。システムの目的、主な機能、ユーザーの種類等を詳細に記述します。
次に「機能要件」です。ユーザーが求める機能やその振る舞いを具体的にまとめ、それらがシステム全体としてどのように連携するかを明らかにします。
また「非機能要件」も忘れてはいけません。システム運用時の品質や性能、セキュリティなど、具体的な機能以外の要求を整理します。
最後に「その他:予算やスケジュールなど」も盛り込みます。プロジェクトの進め方や目標達成のためのスケジュール、開発や運用のための費用等、実装を進める上で重要な情報を記載します。
開発するシステムの概要
開発するシステムの概要とは、具体的にどのようなソフトウェアやアプリを開発するのか、その全体像を明確にすることです。
例えば、業務効率化を目指す社内システムの開発であれば、「業務効率化を実現するための社内システム」という大枠を設定し、その下に「社員の勤怠管理」「顧客管理」「業績分析」などの具体的な機能が派生する形が考えられます。
この概要を明確にすることで、開発全体を通したビジョンが設定でき、エンジニアチームは共通の目標に向かって進行することができます。
機能要件
機能要件とは、開発予定のシステムが備えるべき機能やサービスの内容を具体的に明記したものです。例えば、「商品の検索・選択・購入ができること」、「ユーザー登録・ログイン・ログアウトができること」などが該当します。
これらの要件は、ユーザーの課題解決や業務効率化を図る上で必要不可欠なものであり、ユーザーからのヒアリングやリサーチを基に正確に定義することが求められます。
なお、機能要件の設定はプロジェクト成功の重要なポイントであるとともに、その後の基本設計や詳細設計、開発、テストといった開発プロセス全体に関わるため、特に注意が必要です。
非機能要件
非機能要件とは、システムがどのような機能を提供するかではなく、その「品質」を示す要素です。
たとえば、システムのレスポンス時間、利用可能な時間帯、同時接続ユーザー数などの性能要件や、データの保管期間やバックアップ体制などの運用要件、セキュリティ要件などが含まれます。
これらはシステムが実際に運用される際の円滑な業務遂行やユーザー満足度に直結するため、機能要件と同じくらい重要です。各種制約条件や法令遵守なども考慮し、要件定義書に詳細に記述することが求められます。
その他:予算やスケジュールなど
要件定義書に盛り込むべき項目として、予算やスケジュールも重要です。プロジェクトを成功させるには、システム開発にかかるコストや期間を予め把握し、適切に計画することが求められます。
予算については、システム開発に必要な費用、特に人件費や器材費、外部委託費などを明記します。スケジュールに関しては、開発のスタートからリリース、運用開始までの期間を設定し、その中での各フェーズの開始・終了時期、マイルストーンなどを詳細に記載します。
これらの情報を盛り込むことで、プロジェクトの進行状況を把握しやすくし、また必要なリソースを適切に割り当てることが可能となります。
要件定義を行う際に心がけたい6つのポイント
要件定義を行う際には、以下の6つのポイントを心がけることが重要です。
① ユーザーの潜在的な要求まで正確に引き出す
ユーザーの潜在的な要求を引き出すことは、要件定義の中でも特に重要なプロセスです。これは、ユーザーが自身の業務を十分に理解しているとは限らず、またいくつかの要求は明示されず、隠れている可能性があるからです。
ヒアリングの際には、ただユーザーの話を聞くだけでなく、詳細を引き出すための具体的な質問を用意しておきましょう。例えば、現在抱えている問題点や改善したい点、理想的な業務の流れなどを詳しく聞くことで、潜在的な要求を見つけ出すことができます。
これらの情報は要件を正確に定義する上で大変重要であり、適切な要件定義ができるかどうかを大きく左右します。
② ユーザーが現在使用しているシステムや業務の流れを把握する
要件定義を行う際にはユーザーが現在使用しているシステムや業務の流れをしっかりと把握することが重要です。これはなぜなら、要件定義の目的はユーザーの問題を解決するためのシステムを開発することにあるからです。
既存のシステムや業務の流れを理解することで、ユーザーが直面している問題点や改善すべき点を明確に特定できます。そのため、システム開発現場ではヒアリングや現場観察を通じて、ユーザーの現状を詳細に理解することが求められます。
この工程は時間と費用がかかるかもしれませんが、後の開発工程での無駄を省き、効率的な開発を進めるための重要なステップです。
③ ミーティングの回数やタイミングも計画に盛り込む
要件定義を行う際のミーティングの回数やタイミングも計画に盛り込むことは重要です。これにより、各エンジニアの作業効率やプロジェクトのスケジュールの管理がスムーズに行えます。
また、定期的にミーティングを設けることで常に全員がプロジェクトの進行状況を把握することができ、必要な調整も早めに行えるでしょう。ミーティングでは、要件定義の進行状況だけでなく、具体的な実装方法やシステム設計の方針も話し合い、全体の方向性を共有することも必要です。
ミーティングの設定はプロジェクトの規模やスケジュールによりますが、進行の頻度やタイミングを明確にすることで、スムーズなプロジェクト運営に繋がります。
プロジェクトの進行中も、ユーザーの要求と要件定義がズレていないか確認する
要件定義を行う上で重要なポイントの一つが、ユーザーの要求と要件定義がズレていないか頻繁に確認することです。生成した要件定義書がユーザーの求めるものを完全にカバーしていると確信するまで、ユーザーとのコミュニケーションを重ねましょう。
また、アジャイル開発におけるスプリント・レビューのように、定期的にプロジェクトの進捗を共有し、フィードバックを得る流れを導入すると良いでしょう。これにより、開発途中での大幅な設計変更や期間・費用の増大を防ぐことができます。
誰が・いつまでに・何をするか役割分担する
要件定義を進める際には、誰が何をいつまでに行うか、つまり役割分担と期限設定が重要です。プロジェクト全体のスケジューリングを立て、各メンバーが自身のタスクを把握できる体制を整えることは、ミスや作業の遅延を防ぎ、スムーズな進行を保証します。
各メンバーのスキルや能力を踏まえた役割分担を行い、タスクごとの期限を明確に設定しましょう。また、進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて調整を行うことも忘れずに。これらが要件定義の成功に向けた大切なステップとなります。
誰もが見やすい・わかりやすい要件定義書を作成する
要件定義書を作成する際は、誰もが見やすい・わかりやすい設計を心がけましょう。理解しやすさは、プロジェクトの進行をスムーズにするだけでなく、後々の改修や機能追加も容易にします。
そのためには、まず文書の構成を明確にすることが重要です。目次を設けて、各章節がどのような内容を含むのか一目でわかるようにしましょう。
また、専門的な用語は極力避け、具体的で平易な表現を用いることも大切です。非IT系のステークホルダーや、新たにプロジェクトに加わるメンバーが閲覧する可能性もあるため、なるべく多くの人が理解できるように作成することが求められます。
必要であれば、図表やイラストを使って視覚的に情報を伝えるのも有効な手段です。
要件定義のスキルを身につけてキャリア・単価アップにつなげよう
要件定義のスキルを身につけることで、あなたのITエンジニアとしてのキャリアアップはもちろん、プロジェクトの進行をスムーズにしたり、ソフトウェア開発の品質を向上させることにも繋がります。
まずは、要件定義の重要性を理解しましょう。それは、ユーザーが求めるソフトウェアの機能や性能を明確にし、開発全体の目標や方向性を設定するための土台となるプロセスです。
これをおろそかにすると、開発が進行してから問題が発覚し、大幅な修正や再開発が必要になる可能性もあります。時間と費用の無駄を避けるためにも、しっかりとした要件定義を行うことが求められます。
また、エンジニアとしてのスキルや単価アップにも繋がります。要件定義ができるエンジニアは、ユーザーとのコミュニケーション能力や提案力、分析力など、技術力だけではない幅広いスキルを持つことを証明することになります。
これらのスキルはIT業界では非常に重宝され、それを持つエンジニアは高い評価と単価を得られる傾向にあります。
しかし、要件定義は技術的な知識だけではなく、ビジネスの理解やコミュニケーション能力など、幅広いスキルを必要とするため難しいと感じるエンジニアも多いでしょう。だからこそ、積極的に学び、スキルを磨いていくことが重要です。
ITエンジニアとしてのスキルを磨き、キャリアアップを目指すためにも、要件定義のスキル獲得に挑戦しましょう。その一歩として、本記事で紹介した知識やポイントをぜひ活用してください。
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現場SEとして活躍する傍ら、IT研修講師として多数のIT未経験人材の育成に貢献。
現在は中小企業を中心としたDX、リスキリングを支援。
メンターとして個々の特性に合わせたスキルアップもサポートしている。
趣味は温泉と神社仏閣巡り。